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大貴side
伊野尾「大丈夫、きっと助けに来てくれる。」
そうやって俺を励ましてくれる彼も、
息が苦しくなる程の大雨に打たれ
まるで涙を流している様にも見えた。
スタッフさん達と逸れてから
もう何分くらい経っただろう。
今の俺達には何の遮りもない、
容赦なく大雨は打ちつけてくるんだ。
でも、
横でやはり不安そうにしている
ちゃんをこんな目に合わせたのは。
__俺なんだ。
俺があの時石に足を引っかけなければ。
ちゃんにロープを繋いでいなければ。
一緒に落ちる事なんてなかったんだ。
伊野尾「なぁに暗い顔してんの。ブスが更にブスだよ。」
大貴「ごめんね…、ちゃん…。俺のせいで…。」
伊野尾「何言ってんの、んなこと思ってないよ。」
大貴「ありがと…、」
伊野尾「なぁ、今なら昔やりたかった、雨水飲むとかできるんじゃね？」
大貴「確かにw」
伊野尾「ぁ゛…、あぁぁ゛…。おっ…、飲めた。」
「なぁ、見て。」
なんて言いながら口の中を見せてくるちゃん。
戯けて見せる彼に俺の少し心が軽くなった。
そんな時、
__「大ちゃん…！伊野尾ちゃん…！」
雨をも切り裂く様な美しい声が響いた。
+
涼介side
__「お前マジでやめろっ！」
あの時の雄也の言葉だけが頭をループする…。
絶対に行くなって言われたのに…、
俺は雄也の目を盗み１人窓から外に出た…。
でも出たは良いも道は知らないし…、
疲れ切った俺の身体では…、
とてもじゃないけど前に進めない…。
声も張れない…。
だけど…、
あの２人の顔を思い浮かべると止まらなかった…。
涼介「ハァっ…、んんっ…、だいちゃんっ…、いのちゃ…。」
必死に必死に足だけを動かすことに集中して…、
何分も十何分も俺は歩み続けた…。
でも止むどころか更に強まる雨粒…。
手も足も身体も頭も痛い…、
身体全身が痺れる…。
もうダメだっ…、
そう思った時だった…。
霧の中にオレンジと青が薄らと見えた…。
大ちゃん…？伊野尾ちゃん…？
そんな仮説がよぎった俺は
最後の力を振り絞って走った…。
涼介「大ちゃん…！伊野尾ちゃん…！」
俺が声を張り上げると…、
びしょびしょに濡れていたが…、
確かに振り向いてくれた２人の姿があった…。
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作者名：麗皐 | 作成日時：2020年8月29日 21時
