・ ページ36
ヒロ side
ドン、と乾いた銃声が辺りに響いた。
「っ………あ、れ」
無意識のうちに歯を喰いしばっていたオレは、痛みを感じないことに気づいて目を見開いた。
オレは撃ってない。間に合わなかった。
でも今確かに銃声がした。
誤射か……?と思って男の方を見る。
「な……」
目を疑った。
オレに銃を向けていたはずの男の手には、何もない。
黒い拳銃は男の足元に落ちていた。
男はガタガタと怒りと恐怖を滲ませたように言う____
「一体なんなんだ…!誰だお前は!」
「えっ……」
男につれられて上を見たオレは絶句した。
なんでここにいるんだ、
「A___」
屋上にいるAちゃんは壊れて吹き抜けになっている天井からオレたちを見下ろしていた。
その手には警察官が所持を許される拳銃があった。
もしかして男の持っている銃を撃って離させたのか__…?
と、自分が考え事をしている場合じゃないと気づく。
オレはまだ上を見上げている男に近づき、技をかけて制圧する。
「っ……スコッチ!この裏切り者!」
「…悪いな」
一応謝ってから男の腹に拳を入れる。
すると男はあっという間に気を失ってしまった。
『景光くんっ!!!』
「A……っ」
屋上から慌てた様子でAちゃんが降りてきて、オレに駆け寄る。
「気を失っているとはいえ、ここには組織の人間がいる。一旦離れよう」
『わかった。景光くん、辛そうだけど歩ける?』
「大丈夫だよ、これくらい」
強がってそう言ったものの、ビルを離れて安全なところへ辿り着いたときには今にも倒れそうだった。
「っ……」
『ちょっと景光くん、やっぱり大丈夫じゃないじゃん…!肩貸すから…』
「気にしないで、オレは、本当に…」
Aちゃんに言いたいことや訊きたいことがたくさんある。
なのに疲労のせいで上手く口が動かない。
「Aちゃん、なんで___」
『景光くんしゃべらなくていいから!!本当に顔色悪いよ……今水を…』
「…助けてくれて、ありがとう……A」
『ちょっと、景光くん、景光くん!?
しっかりして!!』
Aちゃんの声が遠くなっていく。
体の限界みたいだ。
まぁ死なないだけ良かったかな。
オレはそこで意識を手放したのだった。
1261人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くるみ(プロフ) - とっても面白かったです (10月6日 0時) (レス) @page47 id: dd662f3c96 (このIDを非表示/違反報告)
Rei(プロフ) - はじめまして、景光くんの優しさや真面目さが大好きなので、景光くんの一途な思いに凄くときめきました。素敵な作品をありがとうございます。 (2022年9月21日 3時) (レス) @page47 id: 8f97d5546c (このIDを非表示/違反報告)
江良(プロフ) - 足軽さん» コメントありがとうございます!大好きだなんて嬉しいです…!このお話が栄養剤になるなんて光栄です(笑)疲労をほぐして頑張ってくださいー! (2022年8月28日 15時) (レス) id: 37f133a8ec (このIDを非表示/違反報告)
足軽(プロフ) - 大好きすぎます………栄養剤になりますありがとうございます………疲労によく効く…… (2022年8月28日 15時) (レス) @page1 id: 762e6989c9 (このIDを非表示/違反報告)
江良(プロフ) - 田舎ママさん» コメントありがとうございます!素敵だなんて…!めちゃくちゃ嬉しいです!こちらこそ最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年8月19日 12時) (レス) id: 1888b997ab (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ