・ ページ16
そこから二人で料理を仕上げ、味見と夕御飯を兼ねてそれを食べてみた。
もちろん美味しかったし、景光くんのおかげで私の料理スキルは人並みくらいになったと思う。
一石二鳥、ってやつだ。
『…で、そろそろ聞かせて欲しいんだけど』
「ん?」
『7年間音信不通だった理由とか、偽名使ってる理由とか。降谷くんはどうしてるのとか。聞きたいこと山ほどあるんだからね!』
食卓をバン!と叩いて言ってやれば、景光くんは「落ち着いて落ち着いて」と宥めてきた。
「ちゃんと話すよ。そのつもりでここに来たんだし」
『…うん』
「えっと、何から話せばいいのかな……。
とりあえず白状すると、オレとゼロは公安に配属されたんだ」
そこから景光くんは話し始めた。
公安に配属されたのだけれど、人の前に立つことのできない役柄だということ。
だから外部の人間と連絡をとれなかったということ。
そして某組織に潜入調査していること。
組織の人間にスパイだとバレてはいけないので、組織外では偽名を使って生活しているということ。
偽名を使って“ポアロ”という喫茶店でバイトしていること。
それらの境遇は降谷くんにも当てはまること。
景光くんが偽名を使い出したのは最近で、【緑川唯】の身分であれば私と接触しても大丈夫だと判断したのだそう。
『な、なにそれ…』
「…ごめん、今まで連絡も何もしなくて。だけどこれからは………っえ」
景光くんが驚いたような声をあげる。
当たり前だ。
私が立ち上がって彼を抱きしめたからだ。
『そんな事情があったなんて知らなかった。大変だったに決まってるよね』
「っ……」
『景光くんが生きてて本当に良かった。会えて良かった……』
そんな危険な仕事、いつ命を落としてもおかしくない。
彼が生きていてくれて良かった。その一言に尽きる。
すると、彼がボソリと呟いた。
「…Aちゃんのおかげだよ」
『え?』
「違うんだよ、オレは死ねなかったんだよ…」
わがままな死に損ない、と呟いた景光くんがどんな表情をしているのか私にはわからなかった。
1256人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くるみ(プロフ) - とっても面白かったです (10月6日 0時) (レス) @page47 id: dd662f3c96 (このIDを非表示/違反報告)
Rei(プロフ) - はじめまして、景光くんの優しさや真面目さが大好きなので、景光くんの一途な思いに凄くときめきました。素敵な作品をありがとうございます。 (2022年9月21日 3時) (レス) @page47 id: 8f97d5546c (このIDを非表示/違反報告)
江良(プロフ) - 足軽さん» コメントありがとうございます!大好きだなんて嬉しいです…!このお話が栄養剤になるなんて光栄です(笑)疲労をほぐして頑張ってくださいー! (2022年8月28日 15時) (レス) id: 37f133a8ec (このIDを非表示/違反報告)
足軽(プロフ) - 大好きすぎます………栄養剤になりますありがとうございます………疲労によく効く…… (2022年8月28日 15時) (レス) @page1 id: 762e6989c9 (このIDを非表示/違反報告)
江良(プロフ) - 田舎ママさん» コメントありがとうございます!素敵だなんて…!めちゃくちゃ嬉しいです!こちらこそ最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年8月19日 12時) (レス) id: 1888b997ab (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ