0×200=0【降谷零】

0が53個 ページ20

『浮気、相手…？』



片野の言葉を理解すると共に、頭がクラクラした。

きっと暑さのせいだけじゃない。



すると女性は涙を流しながら、途絶え途絶えに話す。



「ごめんなさい糸瀬さん…っ、知らなかったの…貴方が彼と付き合ってたことも浮気されてるってことも…。信じてとは言わないけど、本当なのよ……ごめんなさい…」

『大丈夫ですよ、貴方のせいじゃないですから…』



彼女を責める理由なんてないし、彼女の気持ちが痛いほどわかる。

大切な人に裏切られるということはとてつもなく辛いことだから。



なのに涙を流して謝ってくれる女性。

片野が彼女を好きになるのも分かるけれど、浮気していたのは怒りを通り越して呆れる。



…でも、今は片野に文句を言っていられる状況じゃない。



「これで俺がお前らを連れてきた理由がわかっただろ？
俺の大切な妹に浮気をして泣かせた男に、妹が好きな奴をたぶらかせて奪い取った女……成敗しなくちゃな」

「お兄ちゃんやめてって言ってるでしょ！」



妹さんの言葉も届かず、男は声をあげて笑い続けている。



狂ってる、と思った。

動機が理不尽だとも感じたし、そんなことしても妹さんは喜ばないのに。

しかし私がそんなこと訴えたところで、彼が納得するとは思えない。



「じゃあな、お前ら。飢えと暑さで干からびて死んでしまえばいい」

『ちょっと…！』

「いやぁぁぁっ…」



妹さんが悲痛な叫びをあげながら、男に連れられていく。

男は私たちをチラリと見てから、扉に鍵をしめて出ていってしまった。

0が54個→←0が52個

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す