英雄と少女

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クッキーを作るのに必要な材料を用意する

＊バター さとう はくりきこ...

よし、全部ある

順番通り材料をボウルに入れて混ぜていく

こういうお菓子作りや料理はこっちに来てから覚えた

生きる理由も、死ぬ理由も見出せないただただ暇な世界で、その暇を潰すためだけに読んだ本の中にお菓子

や料理の本があったからだ

実を言うとﾀﾋぬ前は料理やお菓子は全く出来なかった

いや、しなかったと言う方が正しいか

まず向こうではそんな事をできるような精神状態ではなかったからな

シャカ シャカ

そろそろいいか

生地をこね始める

...あの時の私は、君悪がられたり、邪魔がられたり、仲間はずれにされるなんて日常茶飯事だった

まぁでもそうなる原因は私にもあったんだと思う

輪に入ろうともしなかったし、顔色も悪くて確かに不気味だったし

私も悪かったんだ

だから、

だから大丈夫

大した理由もなくああなった訳じゃない

もしそうだったら、まだ希望はあるって信じて、必死に失ってしまった、壊れてしまった感情や関係を取り

戻そうと必死にもがいていたあのころの私は何だったって言うんだ

ああなる運命だったとでも言うのか

それともただの偶然で私がああなったのか？

偶然ごときで私は人生を奪われたっていうのか？

ポロ

頬が濡れている？

泣いているのか？

自分でも理解できない

なんだこの気持ちは

近くにあったティッシュで頬を拭く

あれティッシュが...黒い

あの液が出ているのか？

さっきみたいな痛みは何も感じなかったのに

でも...

＊ハッ

なんだか笑えてきた

本物の涙すら流せないなんて

さらに落ちぶれたな

これじゃまるで化け物だ

＊うぇっ

ポタポタ

また口から液体が出てきた

＊ハッ ハ...ハ？

なんだこれは

体が震えている

やっぱり私は泣いているんだ

＊うぅっ

向こうにいた頃の私は、思ったより傷ついていたようだ

馬鹿だなぁ、今になって気付くなんて

今更思い出して後悔してももう遅いのに

＊ぐすっ ひぐっ

ズキッ

消えそうなソウルが痛んだ気がした




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