Ephemeral Joshua (ページ3)

今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:21,413 hit

episode3 ページ3

「…風邪引くので。」

彼の方に傘を傾けようとしたが、それにはかかとを上げて背伸びが必要だった
背伸びをすると彼はクスッと笑う。笑うと少しだけ前歯が出るんだ

『君が濡れちゃうよ。』
「あ…」

何やってるんだ…
背伸びをやめると布の部分に頭が当たってしまった
すかさず彼はリュックを背負い直して傘の持ち手を持った

『ありがとう。僕すぐそこのバス停まで行くけど…』

偶然にも方向が同じだ。
私も、そう伝えると彼はにこにこと歩き始めた

…人気の先輩と相合傘。
今日はなんだか非日常的な一日だ
そもそもこの人は私の名前知らないから運命もくそったれもない
…いや。私もこの人がホン・ジなんちゃらということぐらいしか知らない

じゃあ100パーセントこれは運命ではないんだ。

バス停まで互いの歩幅を合わせながら向かう
私の歩幅に合わせると少し窮屈そうで、私が少し無理をして大きく歩く
だが激しい雨のせいで足場が悪い、そのためいつもよりバス停が遠く感じる

『名前、なんていうの？』

たわいのない話が始まるのだろうか
それともクリーニング代を請求されるのだろうか
同じ大学だからといって簡単に教えていいのかな
でも多分明日以降話すことも無いだろうからテキトーな名前でも教えようか

「みきです。」
『Aちゃんじゃなかったっけ』

…え。
あ、まずい。そういやユイが私の名前呼んでた気がする
全然別の名前を言ったことがすぐにバレてしまった

『まあ怪しいよね、同じ大学でも大勢いるし』
「…すみません」
『Aちゃんで合ってる？』

人からちゃん付けで呼ばれることが習慣でない。
何度も言うが私はこの人の外見が結構理想で、この余裕のあるトーンで話すところも素敵に思っていた

「…合ってます。あ、ホン…ジなんちゃらさん」
『ジ？…あぁ、ハンカチの？』

私の発言が度々ツボにハマるのか口元を手で押さえて笑う
笑う度に喉仏が動く、顎から鎖骨にかけてのライン綺麗だなとか隣から見ていて思う

『ジス。ホンジスだよ』
「…ジスさん。」

コバルトブルーのこのTシャツ、高くはないと思う
だけど彼のような外見が整った人が着ればブランドものに見えるんだろう

なんて話してるうちにバス停に着き、屋根があるベンチに腰掛ける
どうやらいつも乗るバスは行ってしまったばかりで次は15分後。

『同じバス停なのに会ったことなかったね』
「…私、いつもゲームしてるから」
『何のゲームしてるの？』

…あ。私苦手だ。