好きの理由 ページ35
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―帰り道、私はずっと知らない街を歩いているような気がしていた。
宮とコンビニに寄り道して帰ったときに通った道で、
そうじゃなくてもよく知っているはずの景色が、あのときはずっとぼやけていた。
少しばかりの、不安。
不安･･と断定はできなくとも、安心でないことは確かだった。
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―改めて、好きだと言われた。
『理由、ずっと言えてへんかったんやけど、』
去年の終わり頃、どうやら私は怪我をした田沢くんに絆創膏を渡していたらしい。
いや覚えとるよ、覚えとるけど。……正直、私にとっては“それだけのこと”やと思っとった。
田沢くんは、私を『優しい人やって』思ってくれたみたいで。
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「･･最初は、告うつもりじゃなかってん」
ぽつり。
思わず漏れ出た言葉を散らすように、田沢くんは小さく息を吐いた。
「迷惑やろうなあ、って、分かっとってん」
迷惑じゃ、と返そうとして、
でもそのあとの言葉に詰まってしまいそうで、結局何も言えなかった。
なにを、この気持ちを、それを聞いて思ったことを、どんなふうに、どんな言葉で、どんな声色で伝えたら田沢くんが傷つけへんのか、とか。
分かったふうにはできひんくて、
“好き”が分からない自分に 少し腹立たしさを覚える。
「二年になっても接点できひんかったら、諦めよっかなー、とかな」自分そのものを笑い飛ばすかのように、田沢くんは笑う。そして続ける。
「…でも」
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「宮のこと見てたら、それはただの言い訳やって気付いてん」
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田沢くんは 「あ、侑の方な！」と付け加えた。
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作者名：沖司ハナ
| 作成日時：2018年5月27日 23時
