友達やから ページ30
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言うてない言葉、というよりかは、言えてへん言葉。
伝えなあかんのに、躊躇してる言葉がたくさんあるってことは、よく分かっとるんやけど。
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―ふと、昨日、宮が『送る』と言ってくれたことを思い出した。
今まで一緒に帰ることはあっても、『送られた』ことはなかった。
大抵は家の近くまでやったけど、言葉にされた途端、いつもの帰り道ではなくなったような気がした。
「なあ」
隣を歩く宮くんに声を掛ける。
「どしたん」
「なんで宮......侑のほうって、サラっと爽やかなこと言えるん」
ふつうはもっと照れる、というか、照れて言えなくなるもんなんちゃうん。
疑問を口に出しながら、昨夕の宮を頭に浮かべる。
そうするたび、私の中で宮侑が美化されていっている、ような気がする。
だって、そうやなかったら、昨日送ってくれた宮侑、なんでこんなにキラキラしてるん、って話やん。
宮くんは「爽やか…？？」と数秒考える素振りを見せてから「まあ、」と続けた。
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「それは、湊川さんと気許し合っとるからとちゃう？」
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予想外の思いがけぬ言葉が返ってきて、私は少し驚いた。
え？気許し合えとるん？私と宮が？
ていうかそんな熟語、思いつきもせえへんかったんやけど。
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「･･友達やろ？」
少し間を置いてから、宮くんは誰かに確かめるようにそう言った。
「あ、そっか」
私は納得しかけて、もう一度疑問が出てきて、でもそれを隠すように納得したふりをした。
( そっか、友達やもんな、そうやな、ほんまに。 ･･ほんまに？ )
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―教室に着くやいなや、あと二、三分でチャイムが鳴るというのに(めちゃくちゃ)印象深い顔が後ろ側のドアにいて、前側のドアから入ろうとする私に向かって、ずんずんと歩いてきた。
「湊川さん！」
「た、ざわくん、どしたん？」
勢い。
田沢くん久しぶりやけど、なんか、押し方変わった？
「めっちゃ今更なんやけど！」
その勢いの良さにのまれて、意味も分からず頷きそうになる。
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作者名：沖司ハナ
| 作成日時：2018年5月27日 23時
