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「A、」
何を言われるのかは分からんけど、嫌な予感だけはしとった。
迷惑やーとかあんなん冗談やし、って言われたらどうしたらええんやろう。
( そんなん言う性格ちゃうっていうのは分かっとるはずやのに )
キュッ、という音がそこで止まった。
宮と私は、遠くもない、近くもない、そんな距離。
顔はもちろん見えるけど、表情は不明瞭。微妙、複雑。
そんな顔やった。
「・・よう来たな」
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―やから、突然のその言葉にめっちゃ驚いた。
えっ歓迎!?それは歓迎なん!?と聞くより先に、宮が続ける。「ありがとうな」
ふんわりとした笑顔で言われたそれに、私は思わず声をあげた。
「えっ」
「えっ、ってなんやねん」
「だって、えっ、急で、なんか、」
今日行くわ、って、最初に誘ってくれた宮に言うてへんかったわけやし、
ちょっと嫌な感じに思えへんかったかな、って。
「・・ええよ。マネージャーになるん誘っといて見学のこと言わんかったんは俺が悪いしな」
みなまで言わなかった続きを、宮は察してくれたようで、そのあとに「ごめんな」と言われてさすがに焦る。
「いや!悪かったんは私もやから!」
休憩時間中に行けばよかったのに、と言えばそこから謝罪合戦。
途中で宮くんたちも来て、茶々入れが始まって数分で休憩終了の笛が鳴った。
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張られたネットのほうへ向かう宮くんたち。
それに続く宮が一度、振り返って言った。
「A、今日何時までおれる?」
体育館の外は、もうすでに薄暗い。
「特に決まってへんよ」
「じゃあ最後まで見といて。送るわ」
キュッ、とまたあの音が鳴る。
宮は踵を返して、体育館の舞台側へ走って行った。
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作者名:沖司ハナ | 作成日時:2018年5月27日 23時