表向き ページ25
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見学だけでも、という言葉をそのまま吸い込んだ私は今、体育館にいる。
一歩 足を踏み入れたそこは、体育の授業でよく知っている場所とは全然違っていて、戸惑った。
あの後「見に行きたい」と言った私を連れてきてくれた宮くんが横におらんかったらたぶん、入られへんかったやろうなあ、とまで思うほど。
知らん世界やった。
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「・・あれ、湊川さん?」
「あ、角名くん。あんな、」
「ついにマネージャーになるの?」
「いやなんでやねん。まって?」
なんでここに、って聞かれるんやろうな〜、って思ってたやん。
『ついに』ってなんでなん?私今までそんな素振り見せてたことある??
角名くんは関西出身じゃない(らしい)のになんで絶妙にテンポ良いん???
私が答えるより先に、宮くんが言った。「いや、とりあえず見学してもらおと思て」
「あーそだね。ていうかそれって、」
「朝言うたやつな。ここだけの話にしといて」
「やっぱり?いやそれはいいんだけど当事者は?」
「知らんけど今週トイレ掃除やとか騒いでたから遅いんちゃう」
・・なんの話やろ。
私の頭上で行われているその会話。少しひそめた声やとはいえ、真横なんやから聞こえるのに内容はサッパリ。全く話が見えへん。
・・前の金曜日、『来週トイレ掃除当たるー!』とか言うて騒いでたやつは知っとるけど。
とりあえず、聞こえてますよーの意を込めて会話に参加してみた。
「トイレ掃除って二階の?大倉先生の監視キッツいやんねー」
「・・・俺はいっつもトイレットペーパー運んできて誤魔化してるよ」
「あぁ、スナの班が当番のとき、やけにトイレットペーパー山積みになってるもんな」
・・ふたりとも特に反応は無くて、しょうもない話が加速しただけやったけど。
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作者名:沖司ハナ | 作成日時:2018年5月27日 23時