誘い ページ22
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侵食されてしまいそうな感覚が、たまにこわくなんねん。
じわじわと、でもそれはいっつも、滲んでいくだけ。
それでもバレーが好きな宮の話を聞くんは楽しいねん。
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「転部はせえへんの?」
「うん。辞めるつもりはない、から」
今のところもこの先も。そう思えるのに。
教室を出て一階に降りて、つま先はいつも下駄箱の方を向いている。
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宮に「兼部は?」と聞かれ「やってもいいみたいやけど」。少し考える。
「考えたことなかったわ」
「そうなん、」“そやったらさ、”
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なんか、そんな雰囲気やったから、なんとなく視線を向けた。
宮の口の動き。
普段はなんとも思ってへんのに、なんでやろ。
( こんな風に動かして「ええよ」とか「ごめん」とか言うてるんやろうな )
しょうもないことを考えていたからか、音が少し遅れて入ってきた。
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「A、バレー部のマネージャーしてみぃひん?」
「…えっ」
―やから、反応が遅れた。
いうてその反応もただの驚きが声に出ただけで、瞬発的な相槌ですらなかったんやけど。
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__わかれ道に、着いた。
私はここを右に曲がり、宮はこのまままっすぐ行く。
「考えといてや、な?」
それは“押し”ではなく
「…うん」
なんなら引き、に近いような気がする。
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「じゃ!」
――てのひらを見せ、宮は走って帰っていった。私も手を振ったけど、それも反応遅れたなあ。
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作者名:沖司ハナ | 作成日時:2018年5月27日 23時