青春を飲み込んで ページ19
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「あ、あと」
歩いている途中、宮が口を開く。
顔を上げて斜め上。
どの角度から見ても、間違いなく宮侑で、私はたまに偶然ってすごいなあと考える。
去年たまたま同じ委員会になって話すようになったっていう、たまたまって。良い偶然でよかった、って。
ひとつ違う選択肢を選んでいたら、こうして一緒に帰ることも無かったであろう彼の顔を見て、続きを促す。
「なに？」
「青春なんか飲んだことないねんけど」
･･なんとなく、分かった気するわ。
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冗談半分、まあいわばジョーク、ネタ。
それを真剣に受け取ってくれたんか、はたまたネタ返しで言ったんかはわからんけど、
わからんけど、
そんなん私やって飲んだことないし。
「･･やろ、やっぱ私の飲みレポは的確やったやろ」
「･･おー。さすがAやわ〜物事の真理を見抜けとるわ〜」
「適当に言っとんの丸分かりやで」
バレたか、と笑うから、バレバレや、って私も笑った。
高校生になったら青春謳歌や！ と言っていた中学三年生の頃の私、
がっかりするかもしらんけど、高二になっても青春がなんやとかいまいち分からんわ。
でもこの瞬間は面白いし、宮と一緒の帰り道は楽しい。
それがすべてなんやと思う。
「ま、俺はバレーが青春やなあ」
ニカッと歯を見せ笑う。
同じクラスの子が言うてた、かっこいい好き、っていう笑顔はこのことやろうか。
確かに私も、この表情は好き、かもしれん。
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「Aは？科学部が青春言うたら怒るで」
幽霊部員やろ、と私が言おうとしていたことを先回りでブロックされた。
「･･そう言われたら無いかも」
宮の言うバレーみたいに、汗を流してそれが青春やって胸張って言えるものが、思いつかんかった。
(･･やけど、宮がサイダーを飲む瞬間。
と、それを考えてる間、やけに“青春”の二文字が頭に浮かんできたんよなぁ..)
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作者名：沖司ハナ
| 作成日時：2018年5月27日 23時
