お前なぁ ページ11
侑side
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「保留だってさ」
淡々と、でも若干笑いを含ませた声で角名がそう言った。
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「…ふぅん、ほんで？」
「それだけだけど」
急になんやねん、と返せば「湊川さんのことじゃん」って、
まあ分かっとるんやけどそんなことは。
たとえ１組に来た理由がサムに借りてた教科書を返すというもので、別に角名に何か用事があったわけでもないのに急に話しかけられたかと思えば保留、そんな連関性のない言葉でも分かってしまった。
･･気にしとるわけとちゃうからな。ほんまに。
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「俺、教科書返しに来ただけなんやけど」
「さっき聞いたから、侑に教えてあげようと思って」
･･微妙に会話のドッジボール。
なんで俺に教えたろっていう結論に辿り着くねん、ときちんと入れたツッコミも総スルーを食らう。
ほんまなんやねん、と小声で呟けば、聞こえていたのか角名は少し笑う。
そして笑ってから、
「侑の好きなタイプってあんな感じなの？」
なんて聞いてくるから。
.
「……は、はあぁ？？？何の話や、」
分からんフリ。
しどろもどろでも。
とにかく、肯定やととられてしまうような言葉はおろか、表情すらも抑えて。
分からないふりを続けて、角名の次の言葉を待つ。
待たんくてもなんなら待たんほうがよかった、と気づくのは角名の言葉から。
.
「確かに惹かれるよね」
あれは。
と、何を思い出しているのかは知らないが、角名はどこか遠くを見つめている。
…いや、っていうか、角名は何の話してんねんほんま。
…なんて雑に誤魔化してみるけれど、角名の言わんとすることは分かっている。たぶん。
( 角名は、Aのどこが、―― )
飄々と。涼しい顔をしている角名に、心の中で文句を言い続けた。
俺が不安になるために、お前に打ち明けたわけとちゃうんやぞ。
角名はやっぱり少し笑って、今度は俺の続きを待っている。
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作者名：沖司ハナ
| 作成日時：2018年5月27日 23時
