337. ページ44
.
明日は久しぶりに部活が休みだ。春高が決まってからというもの、休みなんてほとんどないようなもので。それでも不満なんて何ひとつなく過ごせているのには私なりの大きな理由がある。毎日飛雄と一緒に居られることと、大好きなバレーをしている飛雄の姿を見られること。これだけで私は全てが満たされてしまうのだ。ひたむきにバレーに取り組むキラキラとした姿がたまらない喜びを与えてくれる。
しかしそうは言っても、たまには息抜きも必要。完全オフな飛雄と甘い時間を過ごしたのもかなり前の話で、そろそろ恋人らしい休日が恋しくなってきていたところだ。二人で何処かへ出掛けてもいいし、お家でまったりイチャイチャするのもいい。飛雄に選択肢を委ねれば、即答で後者を選ぶだろうけど。
部活は休みで、家にも終始二人きり。条件としては完璧だ。あわよくば───そう望んでいるのは、飛雄だけではなく私だって同じだ。
熱を孕んだ頬を両手で何度か軽く叩くと、モップ掛けを丁寧に行っている隣りへ並んで軽快な口調で覗き込んでみる。
『ねぇ飛雄！明日って暇？』
「おう」
『えっと・・・じゃあさ、家に──』
「Aー！勉強教えて！」
モジモジと両の指をくっつけながらだらしなく頬を緩めていた私は、横から差し込まれた声に大きく肩を跳ねさせた。青ざめた顔ですぐ隣りまで駆け寄ってきた日向くんは縋るように私の肩を掴むと再度同じ台詞を口にする。どうやらよほど勉強を教えて欲しいらしい。
一体何をそんなにも焦っているのかと聞けば、今日の小テストがあまりにも酷かったことが原因のようだ。このままでは期末テストまで響くと担任に言われていると。返ってきたテストを死んだ顔で紙ヒコーキにしていたのはそういう理由があったのか。
「おっ、お願いA！期末テストで赤点取ったらバレーやらせてもらえないかも！」
『た、確かに。それは困るね』
「Aは俺のコーチだぞ。自力でなんとかしろ」
「そういうお前も１２点だったって言ってたじゃんか！」
『え？』
疑いの眼差しを向けられた飛雄は瞬時に鼻先を逸らした。澄み切った青空を見つめながら「いや、どうだったかな」なんてすっとぼけている。確か小テストは６０点満点だったはず。それで１２点というのはさすがにマズイのでは。なんなら日向くんより点数低いんじゃないのか。
先程までの浮ついた思考は一度放り投げて、目の前に現れた課題に意識を傾ける。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3880人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
惠音(プロフ) - 名無しさん» キュンですね〜！素敵なシチュありがとうございます！勉強会の話が終わったら、ちょいちょい物語動かしていこうかな〜と思っています！永山さんも登場する予定なので楽しんでもらえたら光栄です....！ (2月12日 19時) (
レス) id: eb865940ec (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 欲望が抑えられないです (2月11日 23時) (レス) id: 5d4eebdee6 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - ほのぼの会やちょい甘な会もいいけど、最近出てこなくなった永山さんが影山にアクションかけて夢主ちゃんが不安になってちょっと永山さんと取り合い的なのしてそれでも夢主ちゃん以外に興味ない影山にカウンターくらって影山と夢主ちゃんの激甘な会が見てみたい (2月11日 23時) (レス) @page44 id: 5d4eebdee6 (このIDを非表示/違反報告)
惠音(プロフ) - Lunaさん» 大好きだなんて嬉し過ぎます....！性癖に刺さる影山くんになれていて良かったー！少しでも日々の癒しになれたら嬉しいです！ (2月5日 7時) (レス) id: eb865940ec (このIDを非表示/違反報告)
Luna(プロフ) - 惠音さん» わぁー！お返事ありがとうございます！ほんと無限大です！！惠音さんのお話大好きです！！ (2月4日 23時) (レス) id: ae56522889 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：惠音
| 作成日時：2023年12月9日 20時
