296. ページ3
.
(月島side)
『誰がなんて言おうと、月島くんは大活躍だった！たまには自分を褒めてあげなきゃ。あんなに頑張ったんだから』
穏やかな笑顔が甘い痛みを連れてくる。
紡がれるそれが彼女の本心であると分かっているからこそ嬉しくて──どうしようもなく、たまらなかった。影山だけじゃなくて、ちゃんと僕のことも意識してくれていたのだという事実が。例えそこに色恋の感情がなかったとしても、灰茶色の瞳に映してくれているということに満足感が生まれてしまう。
喜びを皮膚一枚の下に隠して平然を装う。彼女が目の前に居ると、普段通りでいることがこんなにも難しくなってしまうのだから笑えてくる。真っ直ぐで天真爛漫なAに振り回されることに、すっかり慣れてきてしまっている自分自身にも。
広がっていく幸福感に包まれながら、靡く髪を耳へと掛けるAをぼんやり見つめる。伏せていた睫毛を再度持ち上げたAの純真な瞳に、溺れかけている自身が映り込んでいく。
『すっごく格好良かったよ、月島くん』
───・・・気を抜いていた自分のせいだ。
見上げてくる満開の笑顔が、保守し続けてきた僕の心臓を完全に貫いてみせた。急加速していく心臓は痛いほどに高鳴って、全身を流れる血液が沸騰したみたいに熱くなる。自分の身体なのに、まるで自分の身体ではないような。だってこんな熱くて痛いもの、今まで感じたことなんてない。
甘い痛みは何度か経験してきたはずだった、Aを好きだと気が付いてから。だけどそれとは比べ物にならないくらい大きな波がいま僕の中に訪れている。しかしその疑問はすぐに答えを手繰り寄せた。もはやそれ以外の理由なんて、ありえないと分かっていたから。分かっていながら、分からないフリをしていた。
「・・・油断した」
心のどこかではいつも否定的だった。”恋人がいる人を好きになる”ということが。どうせ報われないからと保険をかけて、一度は受け止めたはずの感情すら何度も有耶無耶にしようとした。
逃げ道をつくることで安心しようとしていたんだ、きっと。他の誰でもなく、自分自身を傷付けないために。だからこそ100%を持っていかれないように気を張っていた。全てを持っていかれてしまったら、後戻りが出来なくなると分かっていたから。
＿＿＿だけどもう、そんな虚勢は意味を成さない。いまこの瞬間、僕の全てはAに持っていかれてしまったのだから。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3880人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
惠音(プロフ) - 名無しさん» キュンですね〜！素敵なシチュありがとうございます！勉強会の話が終わったら、ちょいちょい物語動かしていこうかな〜と思っています！永山さんも登場する予定なので楽しんでもらえたら光栄です....！ (2月12日 19時) (
レス) id: eb865940ec (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 欲望が抑えられないです (2月11日 23時) (レス) id: 5d4eebdee6 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - ほのぼの会やちょい甘な会もいいけど、最近出てこなくなった永山さんが影山にアクションかけて夢主ちゃんが不安になってちょっと永山さんと取り合い的なのしてそれでも夢主ちゃん以外に興味ない影山にカウンターくらって影山と夢主ちゃんの激甘な会が見てみたい (2月11日 23時) (レス) @page44 id: 5d4eebdee6 (このIDを非表示/違反報告)
惠音(プロフ) - Lunaさん» 大好きだなんて嬉し過ぎます....！性癖に刺さる影山くんになれていて良かったー！少しでも日々の癒しになれたら嬉しいです！ (2月5日 7時) (レス) id: eb865940ec (このIDを非表示/違反報告)
Luna(プロフ) - 惠音さん» わぁー！お返事ありがとうございます！ほんと無限大です！！惠音さんのお話大好きです！！ (2月4日 23時) (レス) id: ae56522889 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：惠音
| 作成日時：2023年12月9日 20時
