305. ページ12
.
「みんな、お疲れ様！さっそくですが、ビッグニュースです」
春高のパンフレット用にスパイクの最高到達点を計っていた部員達は、慌ただしく体育館へとやってきた武田先生に視点を向けた。いつもバタバタと忙しないイメージのある武田先生だが、こうして体育館へ走ってくるときはだいたい何か大きな話題を持ってくる。今までの経験談だ。
まさにその期待を裏切らない、意味深なビッグニュースという文字。部員達が揃って疑問を浮かべ、その口から紡がれる先を黙って見つめている。
沈黙の流れる空間を一瞥した武田先生は、乱れた呼吸を整えたのち飛雄へと視線を送った。この場にいた誰もが予想しなかった情報を添えながら。
「影山くん。君に、全日本ユース強化合宿の招集がかかりました」
「・・・ッ、全日本？！」
「・・・ユース・・・？！」
「すげぇ！」
驚愕に染まる反応がその場に流れ、皆が一斉に飛雄へと視線を向ける。当の本人も予想だにしない出来事なのだろう、切れ長な蒼い瞳が大きく驚きに揺れた。
全日本ユースとは、言ってみれば１９歳以下の日本代表みたいなもの。そんな選ばれし者だけで行われる全日本ユース強化合宿は、世界を相手に戦っていく選手を育てることを軸にしていると聞いた。選ばれたメンバーの中から２年後の全日本ユースの選手が選出され、将来有望な”未来の日本代表候補”を選ぶために行われているという物凄い合宿なのだ。
田中先輩と西谷先輩に頭を撫で回されている飛雄へ視線を向けると、湧き上がる様々な感情が涙腺を緩めていく。
『本当に凄いところまで来たんだね、飛雄』
キラキラと瞳を輝かせながらボールに触れていた少年は、今まさに世界への階段を登り始めた。一歩ずつ、しかし着実に、描いてきたその夢物語を形にしている。
大きな挫折に打ちのめされ、漠然とした迷いと孤独に立ち止まりそうになったときもあった。それでも常に高みへと手を伸ばし、真っ直ぐに走り続け、ただひたすらに”バレーボール”という概念を愛した彼の夢が、今まさに現実へと姿を変えようとしている。
─── ”じゃあおれがバレーボール選手になったら、一番キラキラしてる景色をAに見せてやる！”
鮮やかに掘り起こされる約束。あの頃の飛雄は、きっと自分がこんなにも高い場所へ登っていくとは思わなかっただろう。幼い頃の小さな口約束が、確かに光を灯し始めているのだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3875人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
惠音(プロフ) - 名無しさん» キュンですね〜！素敵なシチュありがとうございます！勉強会の話が終わったら、ちょいちょい物語動かしていこうかな〜と思っています！永山さんも登場する予定なので楽しんでもらえたら光栄です....！ (2月12日 19時) (
レス) id: eb865940ec (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 欲望が抑えられないです (2月11日 23時) (レス) id: 5d4eebdee6 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - ほのぼの会やちょい甘な会もいいけど、最近出てこなくなった永山さんが影山にアクションかけて夢主ちゃんが不安になってちょっと永山さんと取り合い的なのしてそれでも夢主ちゃん以外に興味ない影山にカウンターくらって影山と夢主ちゃんの激甘な会が見てみたい (2月11日 23時) (レス) @page44 id: 5d4eebdee6 (このIDを非表示/違反報告)
惠音(プロフ) - Lunaさん» 大好きだなんて嬉し過ぎます....！性癖に刺さる影山くんになれていて良かったー！少しでも日々の癒しになれたら嬉しいです！ (2月5日 7時) (レス) id: eb865940ec (このIDを非表示/違反報告)
Luna(プロフ) - 惠音さん» わぁー！お返事ありがとうございます！ほんと無限大です！！惠音さんのお話大好きです！！ (2月4日 23時) (レス) id: ae56522889 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：惠音
| 作成日時：2023年12月9日 20時
