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会場の歓声が漏れる広い廊下。誰もいない空間に立ち尽くす私達のあいだに沈黙が流れる。
＿＿＿この場に私だけを残したということは、私に何か話があるのだろう。二人を帰したところを見ると大事な話なのかもしれない。
催促するように視線を持ち上げると、ぶつかった金茶色の瞳が言葉を手繰り寄せようと宙を彷徨う。しかしそれはすぐに再び私を中心に捉え、溜め息がひとつ。抑揚ない声が、呆れた様子で押し出された。
「・・・影山、たぶんもう戻ってるよ」
『え？あー・・・うん、そうかもね』
「馬鹿でしょ、なんでわざわざ来たの」
『えっ？だ、駄目だった？迷惑でした！？』
「は？いや違う・・・そうじゃなくて、」
切り出された台詞の意味を理解するのには少しだけ時間を要した。”ひょっとして迷惑だっただろうか”と焦燥に埋もれた私を引き上げたのは、月島くんの優しい思いやり。
”影山の勇姿より、何故自分を優先するのだ”という。
相変わらずの伝わりにくい優しさに笑みが零れる。きっと申し訳ないという後ろめたさがあるのだろう。だけどそれを素直に伝えることが出来ないのが彼なのだ。その相手が飛雄だから、尚更なのかもしれないけど。必死に台詞を選抜する姿に表情を綻ばせると、気まずげに伏せられた顔を茶目っ気たっぷりに覗き込んでみる。
『大丈夫だよ、飛雄にはいま皆がついてくれてる。だからこそ私は月島くんについていようと思ったんだよ。きっと色んな感情を、ひとりで抱えているだろうから』
「・・・大袈裟」
『ほんっと可愛くないなー。たまには素直に甘えたらどうなんですか月島くん』
大きく揺れ動いた金茶色の瞳が外され、薄い唇が普段通りの皮肉を綴る。慣れた返しにわざとらしく肩を竦めて「ほら、早く行こう？」と足先を出せば、その歩みはピタリと止まってしまった。
＿＿＿月島くんが、私の手を握ってきたせいで。
少し振れば解けてしまうほど弱く、力なく握られた指先。やや俯かせたその表情にはひどく辛辣な色が滲んでいた。突然の行動に理解が追いつかない。ただ黙って彼を見つめると、何度か開閉させた唇から抑揚に欠ける音が零れ落ちた。
「・・・それなら、この試合に勝ったら・・・ひとつだけ、我儘を聞いて欲しい」
途切れ途切れに紡がれる言葉。その言葉を伝えるのにどれほどの感情を堪えているのか、目の前にいる月島くんを見れば手に取るように分かってしまった。
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惠音(プロフ) - mbftmmさん» 嬉しすぎるお言葉ありがとうございます！独特な書き方をどう感じてもらえるか不安だったんですけど、そう言っていただけて本当に嬉しいです....！まだまだ物語は続きますので、最後までお付き合い頂けると幸いです！！ (10月12日 10時) (
レス) id: eb865940ec (このIDを非表示/違反報告)
惠音(プロフ) - yokyo586さん» 励みのお言葉ありがとうございます！影山くんとのお話だけど、月島くんの良さを出来る限り表現していきたいと思いまして....！幸せだけじゃなくて切なくて辛い感じとか、リアルな恋愛を書くよう心掛けていますので....そのへんも楽しんで頂けたら幸いです！ (10月12日 10時) (レス) id: eb865940ec (このIDを非表示/違反報告)
mbftmm(プロフ) - 主様は天才ですか？天才ですね？きゅん死寸前です……言葉の綴り方も上手で世界に入り込んでしまう…！！！応援してます！！！！！！ (10月12日 0時) (レス) @page11 id: 17c26d4027 (このIDを非表示/違反報告)
yokyo586(プロフ) - 切ない···影山大好きなのに、月島を応援したくなっちゃう···読み手の心を鷲掴みに出来る作者様すごすぎます！キャラの心情や背景がすっごく分かりやすくてスっと物語に入れちゃいます！ (10月9日 21時) (レス) @page11 id: 1b6531e2bb (このIDを非表示/違反報告)
惠音(プロフ) - まゆ華さん» この作品を見つけてくださってありがとうございます！面白いと言ってもらえて嬉しいです....！これからも楽しんでもらえるように頑張りますので、よろしくお願いします！ (10月4日 20時) (レス) id: eb865940ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：惠音
| 作成日時：2023年9月30日 19時
