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ファイナルセットのスターティングは菅原先輩だった。疲労が蓄積した飛雄を回復させるためだろう。険しい表情でコートを見つめるその右手には白い猫のぬいぐるみが握り締められている。湧いた嬉しさと愛おしさが全身を駆け巡って、同じように胸元で黒猫をぎゅっと握り締めた。ほんの少しでも、想いが伝わるように。飛雄の力になれるように。
最終セットは１５点まで。少しでも点を離されればあっという間に勝負がついてしまう。序盤は調子良く得点を重ねた烏野だったが、すぐに挽回されて逆転を許してしまった。
＿＿＿揺らぐことのない強さ。
勢いづき始めた白鳥沢は立て続けに攻撃を仕掛ける。
『月島くんの集中力と精神力って本当に凄いよね』
「うん、こんな慌てちゃうような状況でもただボールだけを見てる感じだよね」
「ビックリするくらい冷静でしょ。兄の俺でも思うよ、それ」
＿＿＿焦り、疲労、苛立ち。
５セットものあいだコートに立ち続け、様々なものがその心身に重なっているはずなのに、ネットの前でひたすらボールを捉え続ける月島くんはひどく冷静だった。
余計な情報は全てシャットダウンし、必要な情報だけを掬いとっていく無駄のない姿に感嘆とした視線を送る。月島くんがネットの前に居てくれるだけで、心に余裕が生まれるような。それだけ頼もしい存在であることを、きっと本人は知らないのだろうけど。素直にそれを伝えたら、月島くんはいつものように可愛くない返しをしてくるに違いない。
牛島先輩のスパイクは烏野側のオーバーコールと判断され、惜しくも白鳥沢の得点に。嘆きに肩を落とすと、部員達が月島くんの元へ駆け寄っていくことに疑問が浮かぶ。
「蛍のやつ、もしかして怪我したのか」
『えっ・・・、』
弾かれるように再度コートへ視線を戻すと、タオルを掌に宛てがいながら会場を出ていく月島くんと清水先輩の姿。観客席を離れる明光さんと仁花ちゃんのあとを追いかけようと動き出した足を一度止め、ベンチに座る飛雄を瞳に映す。私が居ないあいだにコートへ戻るかもしれないが、こんなときに私情を挟んではいけない。私はマネージャーなのだから、しっかり割り切らなければ。
＿＿＿大丈夫、飛雄には皆がついてくれてる。
私が居なくても、もう独りになんてならないから。
少しだけうしろ髪ひかれる思いを無理矢理振り切って、握り締めた黒猫をポケットへしまい込むと会場を飛び出した。
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惠音(プロフ) - mbftmmさん» 嬉しすぎるお言葉ありがとうございます！独特な書き方をどう感じてもらえるか不安だったんですけど、そう言っていただけて本当に嬉しいです....！まだまだ物語は続きますので、最後までお付き合い頂けると幸いです！！ (10月12日 10時) (
レス) id: eb865940ec (このIDを非表示/違反報告)
惠音(プロフ) - yokyo586さん» 励みのお言葉ありがとうございます！影山くんとのお話だけど、月島くんの良さを出来る限り表現していきたいと思いまして....！幸せだけじゃなくて切なくて辛い感じとか、リアルな恋愛を書くよう心掛けていますので....そのへんも楽しんで頂けたら幸いです！ (10月12日 10時) (レス) id: eb865940ec (このIDを非表示/違反報告)
mbftmm(プロフ) - 主様は天才ですか？天才ですね？きゅん死寸前です……言葉の綴り方も上手で世界に入り込んでしまう…！！！応援してます！！！！！！ (10月12日 0時) (レス) @page11 id: 17c26d4027 (このIDを非表示/違反報告)
yokyo586(プロフ) - 切ない···影山大好きなのに、月島を応援したくなっちゃう···読み手の心を鷲掴みに出来る作者様すごすぎます！キャラの心情や背景がすっごく分かりやすくてスっと物語に入れちゃいます！ (10月9日 21時) (レス) @page11 id: 1b6531e2bb (このIDを非表示/違反報告)
惠音(プロフ) - まゆ華さん» この作品を見つけてくださってありがとうございます！面白いと言ってもらえて嬉しいです....！これからも楽しんでもらえるように頑張りますので、よろしくお願いします！ (10月4日 20時) (レス) id: eb865940ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：惠音
| 作成日時：2023年9月30日 19時
