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白鳥沢の空気に呑まれそうになる自身を奮い立たせてかぶりを振ると、笛の音が鳴る前に飛雄の元へ駆け寄る。きっと次に話せるのは試合が終わってからだろうから。
すぐに私を中心に捉えた飛雄は両手で掴んでいたボールを脇に抱えると身体を向き合わせてみせた。
『試合、頑張って。精一杯応援する』
「おう」
敢えて短い声援で終わらせたのは必要以上のプレッシャーを与えたくないからだ。先程の月島くんで学習した私は伝えたい言葉を全て呑み込んで笑顔で送り出すことにした。おそらく月島くんはただの揶揄だと思うし、強メンタルな飛雄は多少のことじゃ微動だにしないだろうけど。
いつも通りの淡泊な返事を聞いてから踵を返すと、すぐに「A」と呼び止める声が背中に投げられた。視線を戻せば、握られた拳を軽く突き出して誇らしげな笑みを刻んでいる。求められていることを理解して同じように強気な笑顔を返す。自身の握り拳を彼のそれに軽く押し当てると、コツンと気持ちのいい音が鳴った。
目元を和らげる飛雄はフッとひとつ笑みを零し、結われていた唇から強い決意を声に乗せた。
「勝ってくる」
凛とした音が心を揺らす。飛雄がそれを口にするだけで絶対に大丈夫だと思えてしまうから不思議だ。抱き締めたくなる衝動を抑えながら誇らしげな笑みを返し、コートへと足先を向ける背中を黙って見つめる。
＿＿＿いまの私に出来る精一杯をしよう。
少しでも力になれるように、私も全力で。
＿＿＿飛雄が描いている夢への第一歩を、
忘れることのないよう瞳に焼き付けよう。
ベンチを独占している真っ白な猫のぬいぐるみへ視線を移し、”飛雄のことお願いね”と心の中で強く念じてからその場をあとにした。
「うわ〜、いよいよだね！」
『うん』
会場に流れるアナウンスを聞きながら、観客席の一番前で部員達の勇姿を見守る。さすが決勝ともなると全てが本格的だ。アナウンスだけでなくテレビ中継の機材まである。見慣れない新鮮な空間になんだか変に緊張してしまう。
順に呼ばれていく烏野高校のスターティングプレイヤーに力強い拍手を送る。【９番 影山飛雄】の言葉に胸が熱くなり、まだ試合前だというのに泣きそうになった。
──・・・嬉しそうな顔しちゃって。
楽しみを待ちきれない子供のような表情が、バレーボールを抱えて瞳を輝かせていた幼き頃の姿と重なる。
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惠音(プロフ) - mbftmmさん» 嬉しすぎるお言葉ありがとうございます！独特な書き方をどう感じてもらえるか不安だったんですけど、そう言っていただけて本当に嬉しいです....！まだまだ物語は続きますので、最後までお付き合い頂けると幸いです！！ (10月12日 10時) (
レス) id: eb865940ec (このIDを非表示/違反報告)
惠音(プロフ) - yokyo586さん» 励みのお言葉ありがとうございます！影山くんとのお話だけど、月島くんの良さを出来る限り表現していきたいと思いまして....！幸せだけじゃなくて切なくて辛い感じとか、リアルな恋愛を書くよう心掛けていますので....そのへんも楽しんで頂けたら幸いです！ (10月12日 10時) (レス) id: eb865940ec (このIDを非表示/違反報告)
mbftmm(プロフ) - 主様は天才ですか？天才ですね？きゅん死寸前です……言葉の綴り方も上手で世界に入り込んでしまう…！！！応援してます！！！！！！ (10月12日 0時) (レス) @page11 id: 17c26d4027 (このIDを非表示/違反報告)
yokyo586(プロフ) - 切ない···影山大好きなのに、月島を応援したくなっちゃう···読み手の心を鷲掴みに出来る作者様すごすぎます！キャラの心情や背景がすっごく分かりやすくてスっと物語に入れちゃいます！ (10月9日 21時) (レス) @page11 id: 1b6531e2bb (このIDを非表示/違反報告)
惠音(プロフ) - まゆ華さん» この作品を見つけてくださってありがとうございます！面白いと言ってもらえて嬉しいです....！これからも楽しんでもらえるように頑張りますので、よろしくお願いします！ (10月4日 20時) (レス) id: eb865940ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：惠音
| 作成日時：2023年9月30日 19時
