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試合開始の笛の音に条件反射で力が入ってしまう。胸元で握る黒猫をぎゅっと抱き締め、コートに立つ飛雄を見つめて小さく深呼吸をする。
─── ”六人で強い方が強い”
飛雄が口にした台詞を心の中で唱える。
大丈夫、飛雄には皆が居てくれるから。
私はただいつも通り、全力で応援をしよう。
『頑張れ』
青城のサーブ。それも初っ端から及川先輩だ。勢いを殺すことなく放たれたボールを澤村先輩が食い止め、アタックラインから飛んでみせた西谷先輩が綺麗にトスを上げる。それを背後から強烈なスパイクで相手コートに打ち込んだ東峰先輩が、見事に烏野のファーストポイントへ繋いでくれた。
＿＿＿息付く間もなく進んでいく展開に呼吸が止まる。まさに瞬きする暇さえ与えないほど、一瞬で過ぎていく。
バレーボールはボールを持つことの出来ないスポーツ。そのうえ落としてもいけない。常に素早く動き続けるボールに全ての神経を研ぎ澄ませていなければならないのだ。観ている私でさえたった一点の流れでこれだけ疲労が出るのだから、コートに立っている人達は想像を絶する緊張感の中で戦っているのだろう。
点の取り合いが何度か続いたとき、この試合が始まってから飛雄が初めて日向くんへトスを上げた。彼等の新たな速攻は相手のブロックを突破し、屈辱のあの一点を挽回してみせた。ぞくぞくと駆ける感覚が全身を抜けて、思わず身震いをする。
お互いに譲れないものがあったはずだ。衝突して、それでも歩み寄り、各々に強さを学んで──いまこうして、その努力が形になったのだ。
『・・・やっぱり凄いや、ふたりとも』
「う〜、なんか泣けてくる」
『ちょっ、仁花ちゃん泣かないで！』
目頭が熱くなり始めた私の横で早くも涙腺崩壊している仁花ちゃん。彼女が私の分まで散々涙を流してくれたおかげで冷静になれた気がする。ポケットからティッシュを取り出して仁花ちゃんへ渡すと、再びコートへ鼻先を移動させた。
＿＿＿彼等は皆、仲間の強さを信じている。
バラバラで歪だった歯車は、軋むことなく悠々と回り始めた。ひとつひとつが強固に、そしてその全てが強く結束して。どんな難局に直面したって決して壊れたりしないほど強化を重ねてきたのだ。
彼らの紡いできた努力を蘇らせながら、瞳に映る青春の１ページを胸の奥深くに焼き付けていた。
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惠音(プロフ) - mbftmmさん» 嬉しすぎるお言葉ありがとうございます！独特な書き方をどう感じてもらえるか不安だったんですけど、そう言っていただけて本当に嬉しいです....！まだまだ物語は続きますので、最後までお付き合い頂けると幸いです！！ (10月12日 10時) (
レス) id: eb865940ec (このIDを非表示/違反報告)
惠音(プロフ) - yokyo586さん» 励みのお言葉ありがとうございます！影山くんとのお話だけど、月島くんの良さを出来る限り表現していきたいと思いまして....！幸せだけじゃなくて切なくて辛い感じとか、リアルな恋愛を書くよう心掛けていますので....そのへんも楽しんで頂けたら幸いです！ (10月12日 10時) (レス) id: eb865940ec (このIDを非表示/違反報告)
mbftmm(プロフ) - 主様は天才ですか？天才ですね？きゅん死寸前です……言葉の綴り方も上手で世界に入り込んでしまう…！！！応援してます！！！！！！ (10月12日 0時) (レス) @page11 id: 17c26d4027 (このIDを非表示/違反報告)
yokyo586(プロフ) - 切ない···影山大好きなのに、月島を応援したくなっちゃう···読み手の心を鷲掴みに出来る作者様すごすぎます！キャラの心情や背景がすっごく分かりやすくてスっと物語に入れちゃいます！ (10月9日 21時) (レス) @page11 id: 1b6531e2bb (このIDを非表示/違反報告)
惠音(プロフ) - まゆ華さん» この作品を見つけてくださってありがとうございます！面白いと言ってもらえて嬉しいです....！これからも楽しんでもらえるように頑張りますので、よろしくお願いします！ (10月4日 20時) (レス) id: eb865940ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：惠音
| 作成日時：2023年9月30日 19時
