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(影山side)
ようやくAと二人きりになれたのに、寸前でキスのお預けを食らわされてしまった。そのうえ空気の読めなさすぎる先輩が俺達のあいだに割って入ってくるもんだから、眉間の皺は増して行く一方だ。疲弊したこんなときこそ彼女に思う存分癒してもらいたいのに、先程から全てが上手い具合にひらりひらりと俺の手元をすり抜けてしまう。
不貞腐れる俺を敢えて見ないフリで流している黒尾さん。小さく声を漏らすと、わざとらしいくらいに満面の笑みを浮かべて三日月を描く唇を割った。
「A、ちょっと影山に話があるんだけど借りてもいい？」
『ど、どうぞどうぞ！好きなだけ使ってください』
「はっ？おい、！」
『じゃあ飛雄、また明日ね！』
俺の手元からするりと抜けていくと、呼び止める声に振り向くことのないまま小走りで遠ざかってしまう。温もりを失った身体が一気に冷気に晒され、先程まであんなに火照っていたのが嘘みたいに全身の温度が下がっていくのを感じる。
＿＿＿ああ、クソ。
せっかく会えたのに、また不完全燃焼だ。
哀れに思えてきた自身に大きな溜め息を吐き出す。この虚し過ぎる状況を作り出した当人へ訝しげな視線をやれば、にっこり口元に三日月を描いている。
「”せっかくイチャイチャしてたのに邪魔しやがって”って顔だな」
「分かってるなら邪魔しないでください」
「だってこんな目立つ場所でキスなんてしようとしてるから気になっちゃって」
「最初から見てたんじゃないですか」
嫌悪の眼差しを送れば軽薄な微笑が刻まれる。どうやら一部始終を見ていたらしく、なんなら事の顛末まで見届けるつもりだったようだ。相変わらず掴めない人だが、俺はどうしてか謎の信用を持っている。
黒尾さんにはこの合宿が始まってすぐのタイミングでAとのことを報告したが、どうやら先にAから聞いていたらしい。Aがこの人にそんな相談をしていたなんて知らなかった俺は、そのとき初めて全てを知ることになった訳だ。
＿＿＿あんなに前からお互い好き同士だったなんて。あのとき勇気をだして気持ちを伝えていれば、俺達はもっと早くに付き合えたのにな。
その事実に後悔が滲んだが、今更そんなことを嘆いてもどうしようもない。恋人になる時期が少し遅れたって、いまこうしてAが俺の隣で笑ってくれるのならそれでいい。”幸せ”だと優しく抱き締め返してくれるのなら、それだけで充分だ。
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惠音(プロフ) - mbftmmさん» 嬉しすぎるお言葉ありがとうございます！独特な書き方をどう感じてもらえるか不安だったんですけど、そう言っていただけて本当に嬉しいです....！まだまだ物語は続きますので、最後までお付き合い頂けると幸いです！！ (10月12日 10時) (
レス) id: eb865940ec (このIDを非表示/違反報告)
惠音(プロフ) - yokyo586さん» 励みのお言葉ありがとうございます！影山くんとのお話だけど、月島くんの良さを出来る限り表現していきたいと思いまして....！幸せだけじゃなくて切なくて辛い感じとか、リアルな恋愛を書くよう心掛けていますので....そのへんも楽しんで頂けたら幸いです！ (10月12日 10時) (レス) id: eb865940ec (このIDを非表示/違反報告)
mbftmm(プロフ) - 主様は天才ですか？天才ですね？きゅん死寸前です……言葉の綴り方も上手で世界に入り込んでしまう…！！！応援してます！！！！！！ (10月12日 0時) (レス) @page11 id: 17c26d4027 (このIDを非表示/違反報告)
yokyo586(プロフ) - 切ない···影山大好きなのに、月島を応援したくなっちゃう···読み手の心を鷲掴みに出来る作者様すごすぎます！キャラの心情や背景がすっごく分かりやすくてスっと物語に入れちゃいます！ (10月9日 21時) (レス) @page11 id: 1b6531e2bb (このIDを非表示/違反報告)
惠音(プロフ) - まゆ華さん» この作品を見つけてくださってありがとうございます！面白いと言ってもらえて嬉しいです....！これからも楽しんでもらえるように頑張りますので、よろしくお願いします！ (10月4日 20時) (レス) id: eb865940ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：惠音
| 作成日時：2023年9月30日 19時
