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＿＿＿代表決定戦が迫る十月のとある土曜日。
何度目かの東京合宿へやって来た烏野高校は貴重な時間を有意義に使うために関東の強豪校との練習に明け暮れた。
飛雄と日向くんの新しい速攻は日に日に成功率を増していき、二人の積み重ねてきた努力を間近で見てきた私は溢れそうになる涙をその都度必死に堪えている。
それぞれが個々の能力を高め、皆が同じ目標を目指して汗を流す姿はまさに
『黒尾先輩！』
「おー、A。久しぶり。また一段と可愛くなっちゃって〜、恋する乙女満喫中？」
『えっと、はい。絶賛満喫中です』
相変わらず大人びた雰囲気を纏う黒尾先輩。その背中を呼び止めて駆け寄れば、空気を読んだ音駒高校の皆さんが一足先にその場をあとにする。「他所のマネージャーに手出すなよ！」と揶揄を飛ばす夜久先輩に小さく会釈をして視線を持ち上げると、同じタイミングで鼻先を向ける彼と見合う。
この合宿が始まったら一番最初に話したかったのが黒尾先輩だ。私の恋心に快く協力してくれた彼に、しっかりと自分の口から報告をしたかったから。
＿＿＿淡く抱き続けてきたその願いを、ようやく叶えることが出来ましたって。
『黒尾先輩。私、その・・・、』
「なに〜、告白？Aなら大歓迎だよ」
『いいえ、違います』
「相変わらず切れ味凄いな」
『・・・私、飛雄と付き合いました』
視線を泳がせながら言葉を濁すと、聞き慣れた台詞と共に戯けてみせる黒尾先輩。食い気味で否定すれば露骨に落ちた肩に哀愁が漂い、変わらないその姿に固くなっていた表情が緩やかになる。
＿＿＿好きだなぁ、黒尾先輩のこういうところ。飛雄がいなかったら本当に惚れてたよ。
交際できたことを伝えると、悪戯に細めていた双眸を丸くして大きく瞬かせた。私達のあいだにほんの数秒の沈黙が流れたかと思えば、途端に表情を弾ませた黒尾先輩が普段よりも明るい声色を寄越す。
「おぉ〜マジか！良かったなぁ！」
『はい、ありがとうございます！黒尾先輩には色々とお世話になったのでちゃんと伝えたくて』
「そっかそっか。嬉しいもんだな、やっぱり。なんか巣立っていく娘を送り出す父親の気分だわ」
『ふふっ、大袈裟ですよ』
「おめでとう。幸せにしてもらえよ」
屈託ないその笑顔はまるで幼い少年みたいで。大きな掌の温もりを頭に感じながら、ひとりじんわりと幸福を噛み締めていた。
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惠音(プロフ) - mbftmmさん» 嬉しすぎるお言葉ありがとうございます！独特な書き方をどう感じてもらえるか不安だったんですけど、そう言っていただけて本当に嬉しいです....！まだまだ物語は続きますので、最後までお付き合い頂けると幸いです！！ (10月12日 10時) (
レス) id: eb865940ec (このIDを非表示/違反報告)
惠音(プロフ) - yokyo586さん» 励みのお言葉ありがとうございます！影山くんとのお話だけど、月島くんの良さを出来る限り表現していきたいと思いまして....！幸せだけじゃなくて切なくて辛い感じとか、リアルな恋愛を書くよう心掛けていますので....そのへんも楽しんで頂けたら幸いです！ (10月12日 10時) (レス) id: eb865940ec (このIDを非表示/違反報告)
mbftmm(プロフ) - 主様は天才ですか？天才ですね？きゅん死寸前です……言葉の綴り方も上手で世界に入り込んでしまう…！！！応援してます！！！！！！ (10月12日 0時) (レス) @page11 id: 17c26d4027 (このIDを非表示/違反報告)
yokyo586(プロフ) - 切ない···影山大好きなのに、月島を応援したくなっちゃう···読み手の心を鷲掴みに出来る作者様すごすぎます！キャラの心情や背景がすっごく分かりやすくてスっと物語に入れちゃいます！ (10月9日 21時) (レス) @page11 id: 1b6531e2bb (このIDを非表示/違反報告)
惠音(プロフ) - まゆ華さん» この作品を見つけてくださってありがとうございます！面白いと言ってもらえて嬉しいです....！これからも楽しんでもらえるように頑張りますので、よろしくお願いします！ (10月4日 20時) (レス) id: eb865940ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：惠音
| 作成日時：2023年9月30日 19時
