私の宿り木 【両面宿儺】

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2018年某日 都内の某高等学校


教師「えーこの物語は、平安を揺るがした化け物に

たった1人殺されず生かされた貴族の「A」が

長期にわたり接していく中で恋心を寄せていくという物語で〜」



眠くなるような一定の声色で

教卓に立つ教師が解説する。





黒板には、今日の課題である古典文学の名前が
デカデカと書かれている。



『宿木物語(ヤドリギモノガタリ)』



手元に開かれる教科書には同じタイトルと

呪文のように連なる古文。

そして顔が2つに腕が4本もある

鬼のような化け物の挿絵が恐ろしい笑みを浮かべていた。


予習もしていなかった為、この時間にはじめて聞く
そのシンプルなタイトルに

しかし何故か懐かしさを覚えて


(…帰りに現代語訳の本がないか探してみようかな)



まだ主人公や時代背景をつらつらと述べる教師の声に

あくびを一つすると、

私はそのまま睡魔に負けて目を瞑った。



＊



『あった』




なんとなく入った書店の一角に

それは大量に積み上げられており、

案外あっさりと見つかった。




“『宿木物語』現代語訳”




なんと、この話は映画化されるようで

本屋の前にでかでかと宣伝ポスターも張り出されていた。



『…なんでこんなに気になるんだろ』


特に古文が好きとか、そういうことはない。

なんなら、興味を持ったことはこれが初めてだ。


いまだに引っかかるなにかに答えを見つけられないまま

私はレジへと向かっった。

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