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目を開けると、当たり前に縁側にいた。

釈然としない気持ちで、細くなった月を眺めるも

脳内は、先ほど見た夢が再生し続ける。



その夢が何周目かしたころ、

ふと、脳に一つの想像が浮かびあがった。




もし、この夢を彼が見せているのだとしたら、
それは私への叱責なのでは、と。



もしや彼は、今の私に痺れを切らしているのではないか、と。





そこに思い当たると、
私は目をあけ、自分の手のひらをじっと見つめた。


今の自分は、酷くつまらない人間だ。

彼の好きな愉快な童とは程遠い。

今彼に会えたとして、
彼はいつものように喉を鳴らして笑ってはくれないことは明白だ。





『...それは、いやだ』


考えてもみろ。

暫く眠るという彼は、もしかしたら明日目覚めるかもしれぬというのに

今の自分を見てがっかりして捨てられでもしたら

いよいよ私は居場所をなくしてしまう。



そう思えば思うほど、私はいても経ってもいられなくなり

慌てて部屋に引っ込んだ。


今の私は、何をすべきだろう。
どうしたら、愉快になれる?



"お前は本当に賢いな"




考えろ、自分。




"お前に餞別をやろう、童"





思い出して...





"お前に未来を与えよう"







そこにきて、ふと彼の言葉が引っ掛かった。



『....未来を、与える』



彼はどういうわけか、私に未来を与えるといった。

彼が何かを与えてくれるのは、実に10歳の誕生日にくれた大量の本以来だった。



あの時のお礼もできていなかったことに今更気づく。



未来をもし与えられたとして、

私は未来であなたにお礼ができるとは限らない。



ならば私は、未来の私の代わりに

今までのお礼も含め

今、あなたの生きた証...過去を残すのはどうだろうか

そう思った。








気づいたら、私はわき目も降らず

埃かぶった引き出しをすべて開けると

無数の和紙を引っ張り出し机に向かった。




久々に筆を持つ感覚に、懐かしさを覚えた。

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ゆりあ(プロフ) - 最高に面白かったです!二人の関係性から、彼女の心情の変化、特にラストの締めくくり方が凄くジーンときました。素敵なお話をありがとうございます! (2020年12月29日 10時) (レス) id: 45a22d77c5 (このIDを非表示/違反報告)
しゅがー(プロフ) - 面白くて一気に見ちゃいました!笑源氏物語にも興味が湧きました!続編楽しみにしています! (2020年12月21日 22時) (レス) id: 13895ddbea (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - すごく面白かったです!続編楽しみにしてます!頑張ってください、 (2020年12月21日 20時) (レス) id: 8f9f2425a1 (このIDを非表示/違反報告)
鬼灯 - 一話から最終話まで一気見しました!ここまで真剣に読んだのは初めてですw 続編も頑張ってください! (2020年12月21日 18時) (レス) id: 0253c03d6e (このIDを非表示/違反報告)
ミズカ(プロフ) - 続編嬉しいです!ありがとうございます! (2020年12月21日 18時) (レス) id: 9ec620cc69 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アイコ | 作成日時:2020年12月18日 11時

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