28 ページ29
あの日宿儺は現れず
後日、彼が捕縛され封印されたことを耳にした。
あの日、彼の言う生得領域というものが
夢であったのか現実であったのかは定かではないが
きっと封印されるとわかって会いに来てくれたのだと思うと
止めどなく涙があふれた。
私はあの赤い満月の晩
拠り所を、居場所を失ったのだ。
その現実をなかなか受け入れられず
暫くの間は食事も喉を通らず
大好きな本を読むこともせず
ただあの晩のように
毎晩縁側に座り、来るはずもない宿儺を待ち続けた。
あなたは結局、最後まで私を殺してくれなかった。
心だけ殺して、いつもの気まぐれで去っていった。
私はあなたといないと、生きる意味さえ見つけられない
ただの宿り木のような人間なのに....
そうして日々弱っていくだけの時間を過ごしていた。
*
さらさらと草木が風になびき
心地よい音を立てていたある春の晩。
私はいつものように縁側に腰かけ、近くの柱に体を寄せていた。
いつもなら夜は寝れず、月を見ながらぼうっとしているのいだが
なぜかその晩は心地よい風に眠気を催した。
ふと気づくと、私の前に宿儺がたっていた。
その光景に一瞬目を見張るが、しかし目の前に広がる景色に
既視感を覚え
あの日と同じ夢を見ているのだと直感する。
一部始終、同じことを宿儺が私に言う。
"有難く思え。お前に、【未来】を与えてやる"
そしてやがて、あの時のように額に指を添えられ
私もまた、あの日と同じことを彼に聞いていた。
残酷だ。なぜこの夢をまた見せるの。
宿儺、あなたがわざと私に見せているの?
彼はそれに答えるわけもなく
またあの日のようにフッと笑っていた。
979人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆりあ(プロフ) - 最高に面白かったです!二人の関係性から、彼女の心情の変化、特にラストの締めくくり方が凄くジーンときました。素敵なお話をありがとうございます! (2020年12月29日 10時) (レス) id: 45a22d77c5 (このIDを非表示/違反報告)
しゅがー(プロフ) - 面白くて一気に見ちゃいました!笑源氏物語にも興味が湧きました!続編楽しみにしています! (2020年12月21日 22時) (レス) id: 13895ddbea (このIDを非表示/違反報告)
空(プロフ) - すごく面白かったです!続編楽しみにしてます!頑張ってください、 (2020年12月21日 20時) (レス) id: 8f9f2425a1 (このIDを非表示/違反報告)
鬼灯 - 一話から最終話まで一気見しました!ここまで真剣に読んだのは初めてですw 続編も頑張ってください! (2020年12月21日 18時) (レス) id: 0253c03d6e (このIDを非表示/違反報告)
ミズカ(プロフ) - 続編嬉しいです!ありがとうございます! (2020年12月21日 18時) (レス) id: 9ec620cc69 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:アイコ | 作成日時:2020年12月18日 11時