保管と抹消 ページ10
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Side sgi
最初はほんとにただ元気がない彼女が気になって声をかけただけで、そこに何か特別な意味なんてなかった。彼女が泣いたあの日から、しばらく経って再び話した時には、面白いこだなって思った。
楽しかったこと、嬉しかったこと、を幸せそうに話すし、こちらが聞いていて飽きない。俺の質問にもきちんと返してくれる。面白いと思った感情はそのあと2人でランチに行った時に、確信に変わって。彼女を見ている、俺自身も楽しい。
そんなことを初めて思った時から、もう1ヶ月くらい経ったかもしれない。もりちゃんと、俺は、あのあと何度かランチに行ったり、飲みに行ったりして、どんどん仲良くなっていて。恐らくもとから、感覚的なものとかが合ったんだろうな。
週に1回くらいという中々な高頻度で、会っている俺らの何回目かの待ち合わせは、普段のオフィス街とは違ってどちらかというと繁華街より。何やら彼女が、30分ワイン飲み放題という店に行きたいらしく、樽から自分で注いで飲むタイプらしい。
ここに行きたい、最近なんて、8割型敬語が抜けた喋り方で話しかけられて、じゃあ行く？なんて言えば、そう言ってくれるの待ってました、なんて笑われた。
そんなことを思い出していれば、彼女から今ホームに降り立ちました！なんてメッセージが飛んできていて。数分後、お待たせしました！なんて彼女が近付いてきて。
「ねえ、俺ら最近会いすぎじゃない？」
『ふふ、それはそう』
「もりちゃん、友達いないの」
『みんな仕事してるから、平日気軽に誘えるの須貝さんくらいです〜』
大学卒業後、大学院へ進学した彼女の周りは社会人が多いようで。彼女は文系だし、大学院へ進むのも少数派に分類されるのかもしれない。
なるほど、俺は都合のいい相手ってことね？なんて言えば、そうともいいますー！なんて笑われるから、ほんとにここ1ヶ月で彼女は俺とだいぶ打ち解けたと思う。
人混みを抜けながら、ずんずん進む彼女に着いていけば、小洒落たバルのような場所に着いた。平日ということもあり、割と空いていて中に入れば、すぐに席に通された。
お店のシステムなんかを、大体聞いてそれぞれ好きなお酒を片手に、お疲れ、なんて乾杯を。
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作者名：エンスイ | 作成日時：2021年3月12日 17時
