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須貝さんに言われたその言葉に、自分が彼のことを否定しようとしていて、その否定した事実に対して受け入れたくない感情が働いて、よく分からない状態になっていたことに気付いた。
嫌いになったわけではないのに、彼のことを嫌いになろうとしていたし、私を振った立場である彼に対して、何か悪いところを探そうとしていたのかもしれない。
須貝さんの言葉は、私の心にこれまでとは全く違う方向から刺さってきて、ああ、私は大好きだった彼と別れたんだな、なんて急に実感させられる。
まだ好きなのに、一緒にいれない。ただそれだけの事実が、私の心の中に、疑問といらつきと、後悔と。様々な負の感情が埋めいて、泣いてしまいそうになる。
あの日から、泣いたことなんてなかったのにな。どうして、今涙が出そうになってるんだろう。
『っ、ごめん、なさい、』
「いーよいーよ、泣きな」
そう言って私にティッシュを渡して。軽く頭に触れられる、大きな手に少しだけ安心して。私はただただ流れてくる涙を拭うことしかできなくて。
どれくらいの時間そうしていただろう。きっと時間にすれば数分なのだろうが、その数分が私にとってはその何倍も大きく感じたような気がする。
落ち着いた？なんて声をかけてくれる須貝さんに頷いて、隣を見れば、いつもの顔で笑っている姿に安心して。
あいつら、ほんとに遅くね？なんて、話題を変えようとしてくれるところが、優しいな、なんて。メッセージアプリを開けば、あと5分！なんてメッセージが送られてきていた。
もうすぐみんな揃い出す頃かもしれない。なんだか、涙を流してすっきりした気持ちになっていて。
「さっきよりいい感じよ、今」
『ほんとですか？』
「いつもの、もりちゃんって感じ」
『ふふ、須貝さん優しいですね』
「伊達にもりちゃんより少しだけ長く生きてないので」
そう言って笑われて。私も笑って。ごめーん！なんて謝る気もないような謝罪の声が聞こえ出して、ふざけたように須貝さんと怒って。
まさか、この環境が私の恋愛面も救ってくれるなんて。
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作者名：エンスイ | 作成日時：2021年3月12日 17時
