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出掛ける準備をする時間、須貝さんと2人で会う時に、ここまで意識したのは初めてかもしれない。クリスマスだから、なんて理由を全てにつけて、普段ストレートのことが多い髪の毛を軽く巻いてみたりして。
待ち合わせ場所に行くまでも、着いてからも、ずっとそわそわしていたと思う。街のクリスマス、という少し浮かれた雰囲気に呑まれちゃうんじゃないか、ってくらい。
おまたせ、なんて歩いてきた須貝さんは、いつもと雰囲気が違っていて。男の人の冬のロングコートって、ずるいと思う。須貝さんスタイルいいし。そんなことを思っていれば、髪に触れられて、珍しいなんて言われるから、須貝さんもって返したら、私と同じ理由が返ってきて少し嬉しくなる。
そのまま手を握ってくれるから。この前会った時みたいに、手を繋いで、並んで歩いて不思議な感覚になる。この後須貝さんが予約してくれているお店に行くことだけ、知っている。どんな感じのお店かは知らないけれど。クリスマスデートって感じだな、なんて思った時に、また我儘な気持ちがひとつ浮かんで、思わず立ち止まって引き留めた。
「……もりちゃん？」
『……好き、です。須貝さんのこと』
「へ、」
『……須貝さんの彼女、として、クリスマスデートしたい』
そう言った瞬間、目の前の彼は目を見開いて、そしてふっ、と笑って、腕一本分あった間を詰めるように、こちらに1歩踏み出して、大きな手で私の頬を撫でて。
「もう、俺がどんだけ考えてたと思ってんの」
『え、？』
「俺の彼女になってくれますか」
そう優しく笑った彼に、そのまま両手を首元に伸ばして、抱きつけば、びっくりしたように受け止めてくれて、頭を撫でてくれる。笑いながら、Aさん一応ここ大通りなんですけどー？、なんて言われて彼から離れて。
行こっかなんて、一旦離れた手が再び握られて、ぎゅっと指が絡められて。手を繋いだまま、ふふ、なんて笑って見上げれば、彼も同じようにこちらを見て笑っていて。
『好きになってくれてありがとう』
「こちらこそ」
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作者名：エンスイ | 作成日時：2021年3月12日 17時
