【QK】ガラス瓶と天秤【sgi】 (ページ37)

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カフェを出た瞬間、冷たい風が一気に首元を通って、思わず身震いする。そろそろ、スヌードを引っ張り出さなきゃいけない時期か、なんて思いながら駅までの道を歩いて。

あと30歩ほど歩けば改札、というところで、駅前の広場にある大きな木がクリスマスツリーに見立てて、飾られているのが目に入った。電飾がつけられて、木のてっぺんには星がのっている。

クリスマスまでは、あと1ヶ月ほどあるのに、街はすっかりクリスマス仕様だ。クリスマス、須貝さんは誰と過ごすんだろうな、なんて、気付けばそんなことを考えてしまっていて。

ああもうこんなの、なんて思いながら、最近はずっと私のことを好きだ、と言ってくれる彼のことで頭がいっぱいだったことに気付かされる。いや気付いていた、気付かないようにしていただけ、なのかもしれない。

元彼のことを思い出すタイミングなんて、いざ、須貝さんと付き合ったら、とかそんなことを考えるタイミングだけで。そのことを思い出すたび、まだ好きなんじゃないか、と思うだけ。

でも、もう気付かないようにしていたのを、認めざるを得ないくらには、彼のことが。たぶんでも、8割でもなく、須貝さんしか好きじゃない、と思うくらいに私は彼に十分すぎるくらいに惹かれていた。

そう思った瞬間に、会いたいな、なんて思って、でもどうやって誘えばいいんだろう、なんて急に恋する女の子みたいになるんだから、私はつくづく我儘で困った人間だ。

目の前のツリーを見ながら、スマホを取り出して下から写真に収める。彼との簡潔な会話が続いているメッセージアプリに、写真をひとつ送って。

綺麗なクリスマスツリー見つけた

なんて可愛げもない文章を。あなたは私とクリスマス過ごしてくれますか？なんて、そんなこと言えやしないけど、伝わってくれる気がして。なんて自惚れすぎだろうか。

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