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約束をした当日、彼女と訪れた場所は俺が想像していたよりもかなり幻想的だった。彼女も想像以上だったようで、目を輝かせながら、え！これすごくないですか！なんて、光によって成される世界に感動している。
ミュージアムというだけあって、あちこちにテーマ別のブースが設けられていて、それらを回るだけで数時間はこの空間の中で過ごせてしまうくらいだ。
『須貝さん、あっちいこー！』
「あーはいはい、待って」
俺の腕に触れるわけではないが、Tシャツを掴んで引っ張られて、あっち、なんて指さす彼女に着いていく。そんなに急がなくても、置いて行ったりしないのに。
楽しそうにこちらを見る彼女に、数ヶ月前、2人で出かけたことを思い出して。あの頃は、まだ彼女への気持ちを実感していないみたいなところもあったが、実感した今となっては、あの時も今も、立派なデートだよな、なんて思う。
そんな彼女の先に行く、楽しみに満ち溢れた後ろ姿を写真に収めて。あの時と同じように、2人のメッセージの中にアルバムを作ろうかな、なんて考えて。
『須貝さん、これ触ってー』
「んー、はい」
『触ってる方向いてー』
「え？…………あ、撮ったな」
『だって撮られてばっかは悔しい。気付いてるんだからね』
彼女の指示通りに動いていれば、どうやら俺は被写体になっていたらしい。2人で過ごす時間が長いと、すっかり敬語も抜けてしまって、撮られてることに対して怒っているかと思えば、私も撮ってーなんて言うから、どっちなんだよ、なんて笑う。お互いこうして、写真を撮りあっていれば、あの時よりアルバムの枚数は多くなるかもな、なんて勝手に思って。
全てのブースを回ったところで俺らは、ミュージアムを出た。入場口を通った頃は日が落ちる前だったのに、外に出た頃には、もう日は落ち切っていた。隣に並ぶ彼女は、満足そうに笑っていて。
『楽しかったー』
「ね、ありがとね」
『こちらこそ。付き合っていただいて』
「いやいや、俺奢られちゃったし」
『ふふ、あ、そうだった』
彼女とゆっくりと歩きながら、このあと、どうしようか、なんて俺は考えていた。
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作者名：エンスイ | 作成日時：2021年3月12日 17時
