半分と一杯 ページ32
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Side sgi
『須貝さん、ここ行ったことありますか？』
突然想いを寄せている彼女が、スマホの画面を見せてきて除けば、そこに表示されていたのは、最近話題になっている光を使った現代的なミュージアム。
彼女が見せてくれたものは、最近できた方で。少し前からあった施設や、出張展示のような展示の一部を街の一角に展示しているのは見に行ったことがあるが。
そんな話を彼女にすれば、後者の方は彼女も行ったことがあるらしい。ミュージアムに一度行ってみたいと思っていて、なんて言葉を続けた。
「じゃあ、一緒に行く？」
『そう言ってくれるの待ってました』
俺が誘えば、喜んだように微笑む彼女に、少しばかり期待してしまうのは当然じゃないだろうか。一度告白する前の関係にまで、戻っていることは、ひしひしと実感しつつあったが、以前よりも彼女の気持ちが俺に対して少し前向きになったような気がする。これは自惚れだろうか。
そんなことを考えていれば、彼女は早速チケット販売ページを見ながら、いつにしますか？なんて、カレンダーと販売ページを交互に眺めていて。
「じゃあ、この日」
『了解です！チケット買っておきますね』
「いくら？今払うよ」
『んー、いつも出してもらってるので、お礼です』
そう言って、QRのチケット来たら送っておきますねー、なんて会話を進める彼女の言葉を遮って、出すよ、なんて言っても頑なに断られる。これじゃいつもと逆だな、なんて苦笑いもするが。
金額を見ようと彼女が持っているスマホを覗き込もうとすれば、だめです！なんて言うから、俺のスマホを取り出せば、その画面すら抑えられる。2人してもはや笑っていて、決着も尽きそうにない。
『ありがとうって言ってください』
「えー、」
『ありがとうって言ってー』
「……ありがとう」
『どういたしましてー！』
半ば無理矢理お礼を言えば、勝ち誇ったような満面の笑みで彼女から言葉が返ってきた。きっとこの感じだと彼女は、譲らないんだろうし、今回は素直にお礼を受け取ってみようか、なんて。
しばらくして入ってきた福良さんに、また2人で楽しそうに話してる、なんて笑われれば、今日須貝さんに勝ったー！なんて彼女は嬉しそうに話していて。
勝ったという理由を話せば、え、ふたりそんな会ってんの、って驚かれて、急に、あ、なんて吃る彼女と、まあ、なんて笑う俺と。
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作者名：エンスイ | 作成日時：2021年3月12日 17時
