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『ありがとうございました』
「いーえ、こちらこそ。楽しかったね」
公園からの帰り道、最寄り駅までの道を並んで歩く。結局1時間くらい話をしながら、花火をしていたけれど、あっという間で、なんでもない話をして、楽しい時間だった。あんな気まずさ全開の期間を経たからか、須貝さんと話していると楽しいな、なんてそんなことを思ったりもして。
「あと、もりちゃん子供好きなの？自然に接してたね」
『あー、子供は好きですよ。あと弟いるからですかね？』
「なるほどね」
『須貝さんは、めちゃくちゃお兄さんでしたよ』
最後の時間に思ったことを言えば、ほんとに？俺実際お兄ちゃんだからなー、なんて。保育園の先生とかにいたら、男の子たちと常に遊んで女の子の初恋の先生とかになりそうですよね、なんて話せば、なんでその例えなの？って笑われた。
歩きながら、数十分前の出来事を思い出して、相手が3歳の男の子だからか、やっぱりその表現がぴったりのような気がして。
「そんなに意外だった？俺の姿」
『だって普段見ないじゃないですか。新鮮で』
「見直した？」
『見直すもなにも、もともと須貝さんマイナスなイメージないですもん。普通にプラスにプラスされました』
「そっか、ありがと」
思ったことを素直に伝えれば、ありがと、なんて笑われて。そんなふとした目があった瞬間に、胸がぎゅって、なって。ああ、もしかしたら、惹かれはじめてるのかもしれない、なんて、まるで人ごとのように考えてしまう。
思えば、花火している時間も、この帰り道も須貝さんのことしか考えてないんだよな、なんて思ってしまったりして。
急にあたりが明るくなって、駅に着いたことに気付く。数段階段を降れば、改札だが降る前に、ねえ、なんて手首を掴まれて。
「やっぱ、メシ食って帰らない？」
突然掴まれたから何事かと思えば、ご飯のお誘いで。実はお腹空いてました、なんて言葉と共にもう少し一緒に過ごすことを選択した。
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作者名：エンスイ | 作成日時：2021年3月12日 17時
