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撮影日。いつもより少し遅めにを意識して、オフィスに来たのに、部屋に入れば須貝さんだけ。ほんとにここはみんな遅刻するじゃん！なんて思って、これまで通り、なんて思いながら、おはようございます、と挨拶すれば、おはよ、なんて返ってきた。
そのまま、須貝さんが座っているソファの隣に腰掛けるように座る。2人の間は、1.5人分くらいだろうか。この場合の一言目ってどうすればいいんだろう、それとも会話が始まるまで、何もしゃべらない方がいいんだろうか、これまでは一体どうしてたんだっけ、なんて様々なことで頭を巡らせていれば、突然パーカーのフードが引っ張られて後ろに倒れる感覚。
うわっ！？なんて声を出しながら、あとちょっとで後ろに倒れるなんてところで、手のひらを後ろについて、上を見上げれば、須貝さんと目が合った。目が合って、5秒、10秒くらい経ったかもしれない。そこで耐え切れなくなって、笑えば同じタイミングで須貝さんも笑って。2人で、吹き出したように笑う。
『なんで引っ張るんですか(笑)』
「どうやったら気まずいって、オーラ消せるかなって」
『え、そんなオーラ出てましたか』
「出てた、前と同じ。」
『ええ、』
その状態で数回会話が往復して。笑った勢いで1回話してしまえば、前みたいに普通に会話ができることに安心する。そのまま、須貝さんが口を開いて。
「来週忙しいって嘘でしょ」
『ええ、』
「あのお店気に入らなかった？」
『いや、好きな感じでした』
「だよね、そう思って選んだもん」
この前のメッセージを嘘でしょなんて、直球で聞かれて、驚きつつ、私の好みを考えながら選んだ、と聞いて余計に驚く。なんでそんなこと言うんですか、って言えば、だってもう隠す必要ないもんね？なんて、須貝さんって、こんな感じだったっけ。
いつも私ばかり話して、こんなに須貝さん主導で話すことも、あんまりなかったかもしれない。そんなことを思っていれば、1個だけ気まずい感じの質問、してもいい？なんて言われて。
「俺を代わりにしたくないって、どんな意味？」
『え、代わりなんて存在申し訳ないというか、私がそんな存在にしたくないというか、』
あの時、答えた時に思っていた曖昧な感情をそのままに伝えれば、須貝さんはよかった、なんて安堵の声を上げている。頭にはてなを浮かべる私に、一言。
「だってそれなら、まだ俺に可能性あるでしょ」
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作者名：エンスイ | 作成日時：2021年3月12日 17時
