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レストランを出た帰り道。駅に向かう道を2人で歩きながら、並木道を通る。両脇に桜の木がある広めの並木道は、平日で人はまばらだが、老夫婦が散歩をしていたり、ランニングしている人がいたり。
春には桜が綺麗に咲いていたが、今はもう全て散ってしまっていて、木は全て緑の状態だ。とはいえ、桜並木とはまた違った趣があるのだが。
『この前まで桜だったのになあ』
「あっという間に散っちゃったな」
『これはこれでいいんですけどね』
俺の半歩前を見ながら、斜め前より少し上を左右に見ながら、つい数ヶ月前まで桜が咲いていたことを思い出すかのように、彼女は歩いている。
ちょうど並木道の真ん中くらいに差し掛かってきた時、彼女の後ろ姿や横顔を見ながら、気づけば俺は彼女を呼び止めていた。振り返ってお互い立ち止まって。
「俺、もりちゃんのこと好きなんだよね」
思ったより、すんなり出たその言葉は、今朝の時点でも、なんならさっきレストランを出た時も、今日言うつもりなんて全く考えていなかった。いつか、とは思っていても、まだ先だと思っていた。
けど、今この場所で彼女に伝えたくなってしまって。目の前で驚いて目を見開いてる彼女に、この後なんて言おうか。
「もりちゃんの今の状況で言うの、ずるいってのも分かってるんだけど」
『……………えっと、』
「俺じゃ代わりになれないかな」
『……………………ごめ、んなさい』
元彼のこと忘れられないなら、代わりでもいいし、お試しでもいいかな、って思ってた。なんなら、寂しい時に埋めるだけのやつでも、最初はいいかなって思ってた。
友達の延長線みたいな関係から始められればな、って。けれど、彼女は違って。ああ、俺の1歩の踏み出し方は間違っていたかな、なんて、このあとどうやって切り替えようなんて思っていれば、彼女の次の言葉が俺を救いもすれば、混乱もさせることになる。
「………須貝さんのことを代わりに、とか、したくないです」
それはどの意味なんだろう。俺、良いように捉えちゃうから、代わりとしてじゃなかったら、友達の延長線じゃなくなれたら、付き合ってくれるの？なんて考えちゃうよ。
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作者名：エンスイ | 作成日時：2021年3月12日 17時
