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彼女が言っていたお蕎麦屋さんは、最寄駅と施設の間くらいにあった。洒落てるというわけではないが、昔ながらという言葉がぴったりのような、雰囲気のいいところ。
向かい合わせに彼女と座って、メニューを見る。天ぷらも食べたいなー、なんて言ったと思えば、この天ぷら付きのセットにする、なんて、彼女が決めたくらいのタイミングで料理を注文して。
『今になって疲れがやばい』
「分かる、遊んでる間は何も感じなかったけどね」
『あと明日筋肉痛やばそう』
「たしかに」
席について、一息ついた途端に、どっとくる疲れに、いつもの何倍も体を動かしたことを実感する。それは彼女も同じのようで、ちょっと眠たくなってきた、なんて発言までしていて。
料理が運ばれてきて、蕎麦を啜りながら、先程まで遊んでいた場所について会話をする。あのコースが、面白かったとか、ボルダリングしてる俺はこうだったとか、そんな内容があるような、ないような、そんな話。
『彼氏、ここまでアウトドアな人じゃなかったから、今日須貝さんが付き合ってくれて、楽しかったです。ほんと』
「あ、ほんとに？俺も久々に体動かせて楽しかったわ」
彼女が別れた彼氏は、インドアかアウトドアか、で判断するなら、どちらかと言えばアウトドアだった、みたいな話を聞いたような気もするが、ここまでアクティブではなかったようで。
俺も彼女に言われなければ、今日の場所を知ることもなかったし、久しぶりにここまで体を動かすこともなかっただろう。疲れはもちろんあるのだが、今日1日を総括すれば、楽しかったに尽きる。
彼女が最後の一口を食べ終わって、しばらく経ったくらいで、お会計をして外に出た。ちなみに彼女は絶対に俺に奢られようとしない。たまには先輩ぶらせてくれてもいいのに。
そんなことを思いながら、駅までの数分を歩く。外はすっかり暗くなってしまったが、家に着く時間は、普段飲みに行った日よりは、早く着くくらいの時間だろう。
相変わらず、疲れた、と、楽しかったを繰り返す彼女と並びながら、ホームに立って電車を待つ。
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作者名：エンスイ | 作成日時：2021年3月12日 17時
