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白い手帳を持って ページ7

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オフィスに着いて、いつも通り作業をしていれば、木戸ちょっといい?なんて声が聞こえて、顔を上げれば伊沢さん。別部屋に呼ばれることなんて滅多になくて、不思議に思えば、別に怒るとかじゃないから、と笑われる。

顔に出てしまっていたかな。PCいりますか?と言えば、いや、いらないーって返ってくるから、メモ用のペンと手帳だけ持って、伊沢さんについていく。

連れてこられて、そっち座ってーなんて言われて。何を言われるんだろう、なんて思っていれば、何か緊張してるみたいだから、率直に言うんだけど、なんて。



『卒業後、うちにそのまま就職しない?』

「………………え」



伊沢さんから出てきた言葉は、まさかの言葉だった。QuizKnockで働いているライターは学生が多いけれど、そのほとんどは、卒業と共に退社という形になる。

てっきり私もそうなると思っていたし、それなりに就活も始めていた。就活し始めてるのも分かってんだけどさ、なんてさらに言葉は加えられて。



「無理に、とはもちろん言わないし、決めるのは木戸だけど」

『はい』

「今後の選択肢として入れて欲しいなと思って」



その言ってもらえることに有難いなんて思う気持ちもあれば、何故私にそう言ってくれるのか、と疑問が浮かばないわけでもない。もちろん、悪い意味で言われているわけではないとは十分分かっているが。

遠慮がちに、ひとつだけいいですか?なんて言えば、ん、何でも聞いて、なんて言われるから、単純にどうして私にその話してくれたんですか、なんて聞いてみる。そう言えば、目の前の伊沢さんは少し目を見開いて。



「うちには木戸が必要だって思ったからだよ」

『…………えっと』

「俺だけじゃなくて、4月から社員になった奴らみんなの意見だよ」



戸惑いを隠せずにいる私に伊沢さんは笑って。もちろん、学生ライターみんなに話してるわけじゃないし、木戸だから話してるんだよ?なんて言われて。

ここまで私を必要としてくれることに、嬉しくなって。今すぐとかじゃないから、決めたら教えて。なんて言ってくれる伊沢さんに、分かりました、と答えて。






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作者名:エンスイ | 作成日時:2021年2月21日 20時

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