目指すのは緑の棟 ページ24
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4年通い慣れた大学への道を歩く。この道を歩くのもあと数ヶ月で終わってしまうと思うとやっぱり寂しい。卒論もだいぶ書き上げてきて、そろそろ大詰めだ。
いくら文字を書くことに慣れているとはいえ、何万字は桁が違う。こんな文章を書くこと、もう一生ないのではないか、と思うくらい、ずっとその論文と向き合っている。
そのおかげで、オフィスへ向かう頻度も以前より少し減っていた。その代わりに大学にいる、というわけでもないが、自宅で作業をしていることも増えた。
今日は週1のゼミの日。門から少し離れた棟への道を歩きながら、先日のこうちゃんとのランチを思い出していた。
好きでしょ、なんて当てられたのはもちろん驚いたのだが、伊沢さんとどうなりたいか、なんて考えたことがなかった。伊沢さんへの好意を自覚したのはだいぶ前で、付き合いたいかと言われたらそれは付き合いたいのだが、自分からその関係性へ発展させたいか、と言われたら今のままでいいのでは、と思ってしまう。
これは甘えなのだろうか。でも私は今のままで、楽しいと思ってしまうのだ。何なら、同じ場所で働ける環境が、大学を卒業してからも続くわけで。
もし自分から告白して、振られたりなんかしてしまったら、なんて考えてしまったら、今の状況を崩したくない、が勝ってしまう。
でもでもでも、もし付き合ったらきっと、今よりもっと幸せなんだろうな、なんて自分に都合のいい未来も考えてみたりして。そんなことを考えていれば、目指していた場所まで着いてしまった。
あー、恋してるって感じだな、なんて客観的に感じてみたりして。こうちゃんが、何かあれば相談に乗るからーなんて、言ってたから何かあれば、言ってみようか。そうランチしていた際に言われた時は、にやにやしていたこともあってか、絶対相談しない!なんて思ったのに。
結局、状況を変えようとしない限り、このもやもやは付き纏うのかもしれないが。今のままでも幸せ。それ以上の幸せを願って、一歩進んでみるか、とそんな勇気を持ち合わせることと、大学を卒業するのはどちらが早いだろうか。なんて、全く違うことを天秤にかけてみたりもするのだ。
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作者名:エンスイ | 作成日時:2021年2月21日 20時