ボールペンからは茶色の文字 ページ13
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Side izw
デスクに戻って木戸に声をかけて、いつも持っている手帳とボールペンを持った彼女は席を立った。その茶色いボールペン、文字色も茶色で、好きな色でかける時くらい黒じゃない色で書きたくてーなんて、この前話していたな、なんて余計なことまで考えてしまう。
前回と同じように向かい合って座れば、同じように緊張しているような面持ちの彼女。
「この前の就職の話?」
『はい』
「急いでなかったから、ぎりぎりとかでもよかったのに」
いろんなところを見た上で、秋とか冬とかに返事をくれても俺としては、別に構わなかったのだけれど。まさか、こんなに早く返事をくれるなんて思わなくて。
早い段階でうちに就職すると決めて他企業は受けないということにしたのか、それとも行きたい企業から内定が出て断られるのか、どちらも自信なんてなくて、気持ちは五分五分だ。
そう思っていれば、彼女がゆっくり口を開いて。
「この前、就職の話を持ちかけてくれて嬉しかったです。私以外にもたくさんライターいる中で、必要としてくださっている感じがして。」
彼女の言葉は、先日俺が話した内容への自分の気持ちから始まった。この流れはこのまま、やっぱり、に続く流れなんじゃないか、なんて考えてしまうのは、普通じゃないだろうか。そう思いながらも、俺は黙って彼女の言葉を聞いた。
「他の企業もいくつか受けて、内定をもらったところもあるんですけど。いろいろ考えて、やっぱりQuizKnockで働きたいなと思って」
『………え、ほんとに?』
「はい。4月からも、ここで働かせていただきたいです。」
『大歓迎だよ』
うちで引き続き働いてくれるということに安心して、俺の言葉に彼女も安心したようで、よかった、なんて声をあげている。いや、俺から持ちかけておいて、返事もらった後にやっぱりナシで、とはさすがに言わないよ。
これからもよろしくお願いします、と言う彼女に、こちらこそよろしくね、なんて声をかけて。あと、安堵の感情に任せて、その髪型似合ってるね、かわいい、なんて口に出せば。目の前で、えっなんて分かりやすく固まる彼女に、あ、やば、調子に乗り過ぎたなんて思っていれば、次の彼女のひとことに今度は俺が驚愕する番となる。
「……伊沢さんにそう言われるんだったら、またしようかなって思えちゃいます」
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作者名:エンスイ | 作成日時:2021年2月21日 20時