ドラマみたいなこと / sgi ページ42
.
季節は3月も半ばに差し掛かった頃。最近やっと暖かくなってきて、花粉に怯えるくらいの時期だったのに、今日は何故だか冬に戻ったみたいに寒い。
いつもオフィスを出るくらいの時間は、日が落ちていることもあって、常に寒いような気もするが、今日は昼間も寒かったせいか、外に出た瞬間、手を擦り合わせてしまった。
少し冷えた手で、スマホの画面をタップして、今オフィス出たよ、なんてメッセージを送れば、俺も同じ時間くらいに着けそうなんて言葉が表示されて。
今日は駿貴くんはオフィスにいなくて、少し大学に用事があって行ってたところらしい。夜は泊まりに行くことにしていたから、合流できる駅から一緒に帰ろうか、と言っていて。待ち合わせ場所に行けば、壁に寄りかかりながら、スマホを触っている人を見つけて、近付く。
『お待たせしました!』
「あ、おつかれ。寒くない?今日」
『ね、寒すぎ』
「手出して」
そう言われて、コートのさらに下のパーカーの中に隠れていた手を出して駿貴くんに広げれば、その手を重ねられて、え、冷たすぎでしょ、なんて笑われて。
一瞬手が離れたと思ったら、はい、なんてスタバのカップを渡された。さっき買ったから、ちょっと冷めちゃったかもだけど、なんて。
それを両手で握れば、手のひらが急に暖かくなって、ありがとうございますってお礼を言えば、どういたしまして、って笑われた。
『駿貴くんのは?』
「俺、さっき飲んじゃった」
『だから、手暖かったのか』
「あー、さっき?(笑)」
カップを渡される前に、重ねられた手のひらは暖かくて、その理由が分かった気がして、渡されたカップに口付ければ、体も少しずつ暖かくなっていく。
電車を待っている間も、最寄駅に着くまでも、今日オフィスでこんなことがあったんだよ、とか、夕飯は何にしようかとか。何でもない会話をしながら、数十分を過ごして。
目的地に着いて、ホームに降り立った瞬間、冷たい風がびゅん、と吹いて急に寒くなる。飲み切ってしまったカップは、ホームのゴミ箱に捨てて。
2人で縦に並んで、降りのエスカレーターに乗りながら、さっきの話の続きを。
.
297人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
エンスイ(プロフ) - ちひろさん» コメントありがとうございます!リクエストは受け付けているのですが、今書いているメンバーでいただけたらと思っており、tmrさんは私自身も雰囲気等あまり理解できていない部分もあり難しいかもしれないです……。今後機会があれば書かせてください…! (2021年2月22日 2時) (レス) id: 275b77238f (このIDを非表示/違反報告)
ちひろ - はじめまして、いつも読ませていただいてます。リクエストなんですが、tmrさんを出来ますか?出来たらよろしくお願いします。これからも頑張って下さい。 (2021年2月20日 23時) (レス) id: 192c096d22 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:エンスイ | 作成日時:2021年2月17日 12時