【QK】ジンジャークッキーと流星群【短編集】

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「相佐先生、診察してくださーい」

『………………は？』



ほら、悪い予感は当たった。目の前の彼は、笑いを堪えたような顔をしてこちらを見ているが、なんだこれは、暇つぶしか何かに付き合わされているのか。

せんせーって呼ぶから、きっとこれは進めないと解放されないんだな、と思って、拓哉くん今日はどうしたのかなー、なんて言えば、せんせーかわいーね、なんて、わざと伸ばした声で返ってきて、思わず止まる。



『………え、なにしたい…？』

「いや、こーやって聞いてくる子いないのかな、って」

『ええー、まあ入院してる子達とかはねえ、私に慣れちゃってるから、たまにふざけて言われるけど』



Aが初恋の相手だったりするのかもね、なんて言われて、これはお医者さんごっこ、なんて医者本人が言うのはちょっと気が引けるが、そのごっこ遊びは終わったのか…？なんて気持ちにさせられる。

結局何がしたいの？なんて気持ちになるのは、当然だと思うが、頭にはハテナしか浮かんでいない私に、彼は笑って。私の腰に手を伸ばしたかと思えば、そのままソファの上でずるずるっと寄せられて、拓哉との距離が近くなった。



『拓哉？』

「まあ、あんまり心配はしてないんだけど」

『…………ん？』

「可愛いって言ってるのは子供だけじゃないだろうな、って思って」



へ？なんて思わず間抜けな声を出せば、意味理解した？なんて言われた。なんとなく理解したような気もするが、患者の子供達ではなくて、大人にも可愛いって言われるよって、話かな？ん…？

分かったような分かっていないような気でいれば、僕Aの病院に知り合いがいるんだけど、なんて。え、私が知ってる人？なんて聞けば、多分そうだと思うけど言わない、なんて言われた。何故だ。

小児科の相佐先生って可愛いよな、彼氏いるのかなって話よく聞くよって言われてさ、この前。なんて、言われて驚く。そんな話初めて聞いたし、院内でも聞いたことがない。



『ええ、初めて聞いた…』

「そりゃあ、本人には届かないように言うでしょ」

『そっ、かあ』



何とも言えず曖昧な返しをすれば、頬に手を当てられて。こうされるの好きなんだよね、なんて、いつだか話してから、時折してくれるな、なんて思って、気持ちよくて軽く目を細める。





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