お気に入りの場所 ページ5
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Side fkr
お世話になっている番組で、
このテレビ局に来る時には、必ず訪れる場所。
テレビ局では珍しく、人通りの少ない場所を
さらに曲がったところに出現する非常階段。
風通りがある場所だから、
季節を選んでしまうところはあるけれど、
この空間で何かを考えたり、何事もなく過ごす時間が好きだ。
今日も例外ではなく、
いつもの非常階段に向かっていた。
だんだん少なくなる人通りを見ながら、
扉を開ければ、なんと今日は先客がいた。
恐らく扉を開いた音で、気付いたであろう彼女は、ぱっとこちらを振り返って。
その顔はよく見知った顔だった。
「あれ、Aさん?」
気付けば、その名前を口から出していて。
一度挨拶をしたことがあるからか、あちらも俺のことを認識してくれていたみたいで名前を呼ばれた。
2人して当たり障りのない会話をして、
お久しぶりですね、なんて、先が広がらないような。
入り口から5段ほど降った、右端に座る彼女を見ながら、
気になっていたことを口だそうと思って。
いつものように、1段目の左端に横向きに座った。
「この場所、よく来るんですか?」
そう問いかければ、驚いたような顔をして。
彼女の返事は肯定であったし、その疑問は同じように俺にも向けられていた。
どうやら彼女もここには、よく来るみたいで、
お互い自分しか知らない場所だと思っていた。
現実的に自分しか知らないとは、
それは考えにくい点ではあるが、
まさか同じような用途で、ここを使っている人が他にいるなんて。
穴場ですよね、なんて微笑む彼女に、
なんだか自分と同じような空気を感じて。
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エンスイ(プロフ) - しほうさん» コメントありがとうございます…!fkrさんも主人公もどちらも好きでいてくださるコメントでとてもありがたいです(T_T ) 読んでいただきありがとうございました! (2021年4月21日 14時) (レス) id: 275b77238f (このIDを非表示/違反報告)
しほう(プロフ) - めちゃっくちゃ面白かったです。fkrさんの優しさやある種の男らしさ、主人公さんの覚悟に胸がぎゅうっとにりました。読後の余韻がすごい…。素敵な作品を、どうもありがとうございました。 (2021年4月21日 10時) (レス) id: 5a9db02a2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:エンスイ | 作成日時:2021年1月28日 0時