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「出せ！」
一星が伸ばしてきた腕をひらりと身を翻してかわし、Aはポケットの中からレコーダーを取り出して録音を止めた。
「お分かりですね。今の会話はこれからクラスの皆さんに聞いてもらいます」
「……」
「いくらアリバイがあろうとも、これは私たちが争っていて、あなたが私を殺すと発言した動かぬ証拠になります」
「そうですね……みんな頭悪いですし、俺よりもあんたを信じる馬鹿が出てくるかも」
「面倒でしょう？」
「まあ、騒ぎを起こすのは本意じゃないですし」
「ここは休戦としませんか？」
しばしの沈黙。破ったのは、一星のフッとこぼれた笑みだった。
「それを力ずくで奪って仕舞えば何の問題もないよな？」
「……やはりそうなります、かッ」
Aは突然一星に向かって駆け出した。彼を突き飛ばし、一星が顔を上げた時には建物の曲がり角へと消えていく。
……すばしっこいな。
これは足の速い兄ちゃんと交代したほうがいい。
一星ははぁ、とため息をついた。
アリバイもしっかり作らないと。
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Aが訪れたのは商店街だった。時間が時間なだけに、殆どの店が店じまいを始めていて人通りはほとんどない。
振り返る。一星が追ってくる気配はなかった。
……妙だな。もう撒けたのか？
その時。Aが通ろうとした交差する道に、一星が現れた。
ゾッと背筋に冷たいものが走る。
「さっきのはフライングですよ」
「ッ！」
先回りされていた？
ニヤリと笑んだ一星の人差し指の先が、ピンと天を指した。
「さあ、よーいドンでいいのかな！？」
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