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「昇はわがままでしょう？」
突然聞かれて、Aは面食らった。
「え？ ああ、どうでしょ……」
「ふふ。昔から考えの足りない子なの。楽しいことや憧れに飛びついちゃうっていうかね。小さいとき夕食のおつかいを頼んだら、サッカー選手のカード付きのお菓子を幾つも買ってきたわ」
うわー、やりそう……とAは苦笑する。
「……影山総帥とはどういう御関係なんです？」
「私？ 私はね、若い頃ここの軍の基地で働いてたのよ。といっても、銃を持ってどうこうするんじゃなくて、給食のおばちゃんみたいなお仕事ね。当時幹部候補生だった影山さんに、カレーを振る舞ったこともあったわね。
……早くに退校して福祉の仕事についてたんだけど、ちょっと病気を患ってしまってね。その時にカンパを募ったりして助けてくれたのが、影山さんな昔の学生さんたちだったのよ」
「慕われていたんですね」
「義理堅いのよ。影山さんは特に」
「ご病気だと伺ってましたが、お元気そうですね」
「昇から聞いたのかしら。大袈裟なのよ、もう……」
「それだけ心配してるということでは？」
「……Aちゃんだっけ？」
明里は優しい目元をそのままに、Aを映した。
「あなた随分大人びてるのね」
「は？」
「喋り方がね、相手を尊重して話そうとしてる。賢いけど無理してるのね。そういう子は……」
……数分後。
Aの目の前には、ずらりと並べられたパフェやケーキやパンケーキの山が。
流石にドン引きを禁じ得ない。
え？ え？ これを全部食べろと？
「たまにはお腹いっぱいにして喋ってみたら？」
「……」
……なんだ、この人……。
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暗闇に繋がる階段を、一歩、また一歩と降りていく革靴。
最下階まで来ると、廊下を一番奥まで進み、現れた重い鉄の扉を押し開ける。
ピ、ピ、ピ、と心電図。モニターに数字が刻まれている。
ベッドに寝ている男は大量の管で機械と繋がっていた。それらのお陰で生きながらえているといった具合だ。
「……帰ってきてしまいました、鬼道さん……」
入ってきたのは鬼道だった。
そしてベッドに眠るのもやはり、鬼道有人の体だった。
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