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「立て、A」
鬼道はAに手を差し出すが、Aはそれを見ることもしなかった。
「…………私は殺してしまったんです……大勢、無意味に……」
訓練の模擬殺戮で一体倒すと、青いペイントまみれのAの頭を、影山は撫でてくれた。
とても優しい瞳で。
その裏で、�牋儖�会�瓩力型佑匹發�嘲笑っているとも知らずに。
「馬鹿みたいに……利用されて……ッ」
握った拳と、絞り出した声が震える。
「春奈ちゃんや明日人さん……光……いい人も、友達になれそうだった人たちも、みんな、みんな……」
「……いや、みんなではない」
パチン。
鬼道が指を鳴らすと、念動力の風が影山と坂野上のほうへ吹き込んだ。
「ぎゃ、ふぁ、ッ」
とてもではないが立っていられず坂野上は転がり、影山も踏ん張らずにはいられなくなる。
それが止んだ時、鬼道の姿は変わっていた。
「ギャラリーがいると変身できないものでな。A……よく聞いて考えろ」
声色が。いや、声が変わった。聞き覚えのある声だった。何度も夢に見た声だった。
「前に説明したように、俺は生きている者にしか変身できない」
恐る恐る顔を上げる。
そこにいたのは紛れもない、月明かりにその黒髪を照らされて新緑の瞳に明るい輝きを灯す、稲森だった。
「俺たち、友達だろ？」
「……明日人……さん？」
照れたように笑う稲森。に、扮した鬼道。
「稲森は自分に向けられる能力を無効化できたようだ。そのせいか、今まで彼に変身することは出来なかった。が、ここ最近になってできるようになってな。
能力が成長したか、制限がついたのかも知れない。……いずれにせよ」
Aの肩に彼の手が乗る。鬼道はしゃがみ込んで、Aに視線を合わせた。
「稲森が生きて、活動している証左だ。全てを諦める前に、彼に謝りたいことがあるんじゃないのか？」
Aの瞳が潤んで、揺れた。
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