＃ ページ21
.
「……大した能力じゃないというが、一体どんな──」
「──光」
ザッ。突如聞こえてきた足音に、Aはハッとして振り返った。
目を剥く。そこにいたのは、紛れもなく一星だ。もう一人の一星が、一星──光へと近づいていく。
「俺は一星光。こっちが兄の充です。たった一人の家族なんです」
「双子……だったとでも……？」
「いえ、兄弟です。俺たちは情報や感覚を共有できる。聞いたことないですか？ 双子の片割れが傷付いたらもう片方も傷つく、みたいな。その程度の能力なんです」
「しかし、それだけでは説明がつかないことがっ」
声を荒げかけたAの前で、充は光を抱きしめた。
「心配したんだぞ……！ 光がいなくなったら俺っ……」
「俺もだよ兄ちゃん。兄ちゃんがいなくなったら、生きていけない……」
兄弟間のそれに水を差す真似ができなくなって、Aは黙り込んだ。だが……。
以前島で寝起きに部屋が荒らされていた時に、充は私をはめるために部屋を元の状態に戻した。
学校と寮は片道十分程度だ。そんな短時間で、本の並び順やタンスに入ってる服の整え方まで寸分違わず元通りにできるものか？
「……」
商店街に先回りされた時や、沢の脇道に現れた時。どうも、ふっと唐突に湧いて出るような感じがあるし……。
何より、今まで兄弟だとよく誰にもバレなかったものだ。
「お前に従うとして、光も一緒でいいんだよな？」
「ああ、いや……」
鬼道が何と言うかは微妙なところだ。
「……俺たち、小さい頃に両親を亡くしたんだ。変な死に方でな。能力者関係の公務を扱う役人だったんだが、自. 殺なんかするような人じゃなかった」
「……」
話し始めたのは充だった。
「遺書があったけど、どう見ても父さんの文書じゃない……それを訴えたって、誰も聞いてくれなかった……」
そこで、Aはハッと思い出した。
ちょっと待て。一星？
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 28人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
