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「十二時以降に殺す殺さないのやりとりをして刺されたはずなのに、レコーダーにはなぜか横断歩道の音が入っている。八時以降の夜間には聞こえないはずの音が」
詰め寄ってくる不動に、Aはごくりと喉を鳴らした。
……ダメだ。何を言っても苦しい言い訳になる。
ここは下手に反論するよりも……。
「それを証明してどうなります？」
……Aの聞き返しに、不動は面食らったような顔をして離れた。それはどこか感心すらしているように見える。
「そうきたか」
「確かにいくらか作戦を立てましたが、それも全て身を守るためです」
「まあな」
不動からあの心臓に迫り来るような覇気が解けた。
「ここでいくら俺が裏付けを取って行こうが、お前お前が被害者だっつー事実は動かねえ」
「私はクラスの皆さんに充さんの危うさと身の潔白を分かってもらいたかったんです」
「……じゃあ前座は終わりだ」
不動はその足を動かし再びAに背を向けた。
「俺が聞きたいのは二つだ。一つは、お前が襲われる理由」
「そんなの分かりません」
Aの表情が不貞腐れるようなものになる。
「一星は熱波みたいな異常者じゃねえ。何か目的や理由があっての犯行だろ」
「明王さんは刺された私が悪いと言いたいんですか？」
「そうだ」
こちらを振り返った不動は、鋭い瞳でAを睨みつけた。
「だって柊は殺人鬼だから」
Aの頬に嫌な汗が伝う。
「……と、以前までなら喧嘩してたんだがな」
しかし不動は不意に目線を逸らして、台所のほうへ向かってしまった。
やがて戻ってきた彼の手には缶ジュースがあり、彼はそれを、Aに差し出す。
「お前、ちょっと変わったんじゃね？」
「……え？」
予想だにしなかった不動の言動に、Aの目は見開かれた。
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