夢を見るから明日は来る。 ページ35
｢ちあき、『ひとりぼっち』は『かなしい』ですよ。｣
俺の手を引っ張ってくれる人がいた。
いや、立ち止まらせてくれた人がいたんだ。
俺の手を取ったそれを見れば、普段は殺伐とした殺気の強い目を優しく穏やかに細めて優しく｢ちあき｣と呼んだ
｢ゆっくり『あるいて』いきましょう。いそいでも、だれもおいかけてはきませんよ｣
俺は安心した。
『まだ人のままでいれる』と自信がついて勢いよく振り向いた
そこには、だれもいなかった。
初めから、俺は一人だった。
いつものように一人で練習する気も起きず、通るはずのない起案書をぐしゃぐしゃに握りしめて教室の教卓の中で蹲る
『誰にも弱い姿を見せなければ強い姿のままでいれる』
これが俺の辿り着いたヒーロー像だった。
どんなに弱くて泣き虫なヒーローでも、変身して悪の前では強くなれる
そう信じていた
｢はず、なのになぁｯ......｣
何度も何度も言い聞かせても心はまだ弱いままで
滞りなく涙は溢れて静かにこぼれ落ちる
｢やりたかったなぁ、みんな、で｣
ｶﾞﾗｯ
途端に教室のドアが開いた
(いやいや待て、もう17時だぞ...！)
急いで泣き腫らした目元を擦り、見つからないように息を潜めるも足音はまっすぐ教卓に向かってくる
ふわり、と花のようにいい香りがした
｢_____は？｣
｢ひ、ひなもり、さん｣
絹のような髪はサラサラと流れて、宝石を埋め込んだような綺麗な瞳はくりくりさせて俺を写しこんでいた
愛らしく長い睫毛をパチパチと瞬かせて俺を見ていた
｢貴方、なにして｣
｢だ、誰にも見られないようにここにいたんだが...雛森さんに見られてしまったな｣
よりによって雛森さんに見られた...！！
弱い姿を誰にも見られてはいけない
見られれば強いヒーローの変身が解けてしまう
無理してそう笑う
｢....まぁ私には関係ないけどね、はい。｣
｢え？｣
雛森さんはハンカチを差し出して｢目元、冷やしなよ｣とだけ言った。
本当に興味がないのか気を使っているのか分からないが全く詮索しようとはしなかった。
｢誰にも言ったりしないわよ。
泣きたいときは、泣けばいいし
無理やり強いフリしてみっともないわよ｣
それだけ言うと雛森さんは俺に見向きもせず教卓の上にあるプリントの束を持って教室から出た
｢は、はは...みっともない、か｣
ハンカチの残り香だけが鼻を掠めた
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さくさくぱんだ(プロフ) - 更新を心待ちにしています！ (2022年4月9日 19時) (
レス) @page39 id: 27ed53f3b6 (このIDを非表示/違反報告)
かみなき主(プロフ) - 何回も読み返してます！ いつか気が向いた時にでも良いのでぜひ続きを書いて欲しいです！ (2020年6月11日 16時) (レス) id: 8084408f37 (このIDを非表示/違反報告)
白雪 - 面白いです!更新待ってます! (2019年12月31日 22時) (レス) id: 567a821487 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき姫2(プロフ) - ４話(？)を見て思ったんですけど、なんで奏汰が昔髪が長かったのを知ってたんですか？ (2019年4月3日 14時) (レス) id: 618aafe19a (このIDを非表示/違反報告)
フルール・ド・リスしんどい(プロフ) - 悠凪さん» そちらも見ていただいてありがとうございます...！！とても感激です！！！今日常生活でとても忙しくどちらも更新できない状況ですがこれからも頑張りたいと思います！コメントありがとうございます^^* (2017年12月10日 13時) (レス) id: d45fe086f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：フルール・ド・リスしんどい | 作成日時：2017年11月14日 2時
