愛しいほどに大嫌い/1(side司) ページ39
(翌日、1年教室前)
学院に登校して、一番に遭遇したのはその場面だった。___ああ、またか。
「彼女」を取り囲んだ生徒たちに、偶然を装って声をかける。「おはようございます、皆様。どうかなさったんですか?」
初めに振り向いたのは、隣のclassの……双子の、兄の方。ひなた君、といいましたね。彼は私を見ると、挨拶を返してから苦々しい顔をする。
「えっと、ニナが……」
「ニナさんが、どうしたのですか?」
返事が来る前に、私は生徒の間から彼女を覗き見た。……陶器のようにつるりとした肌を滑り落ちているのは、数滴の涙。わざとらしく抑えられた腕には、青い痣が出来ている。
廊下の隅に座り込んだ彼女を、数人の生徒たちが心配そうに囲んで、励ましの言葉をかけていた。
彼女は、私に気づくとハッとしたように顔をあげる。それから、笑おうとでもするかのように表情筋を引きつらせた。
「無理に笑わなくて結構です。……それにしても、なんとまあ痛々しい……。誰に、やられたのですか?」
試しにそう言ってみたら、彼女は待ってましたとばかりに悲しそうな表情を作り、俯向く。ちがうの、と呟いてまた、ほろりと涙を零した。
「悪いのは、私なの……。私が皆と仲良くしたから、いけないの」
顔を覆い、すすりなく彼女に、彼女と同じクラスの生徒たちが気遣うように声をかける。大丈夫?だとか、君のせいじゃないよ、とか、なんとも素晴らしい騙しっぷりですね。
「……じゃあ、やはりAさんの仕業ですか?」
彼女はこくんと頷いた。……毎回思うのですけど、そんなに泣いてmakeはとれないのでしょうか。
「Aちゃんが、「皆に優しくしてもらって、調子のらないでよ」って、殴ってきて。私が皆とかかわらなかったらこんなことにならなかったし、皆にも迷惑はかけなかったのにっ……」
ハンカチを握りしめて、ごめんね、ごめんねと泣き崩れる彼女。どんな真実よりも、完成された嘘の方が信じられるというのは、強ち間違いではないのでしょうね。現に、他の皆様は彼女に心酔し、同情して、Aさんを怨んでいる。
……本当に、被害者気取りがお上手なことで。
「少し、失礼します」
生徒の輪を潜り抜けて、彼女の目の前に跪く。___嘘泣きの上手な女王様に、毒を仕掛けて差し上げましょう。
彼女の片手をとり、私は満面の笑顔を浮かべた。
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とくくくめい - もう、ほんと、この小説の司くんが、まじ愛おしいほど大好きです!!!!!!!この小説に出会えた事が本当幸せです!すごく面白いですハラハラさせられます!!! (2017年8月19日 17時) (レス) id: d661f7493a (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - みかん☆さん» いえいえ、コメントありがとうございます!なるほど……そういう発想もありましたか…!!しかし花みたいに綺麗な噂ではないところが欠点です笑 応援ありがとうございました! (2016年9月22日 18時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
みかん☆ - 鬼龍さん!!火のないところに煙はたたぬとも言いますけど根がなくとも花は咲くとも言いますよ!!(これが言いたかっただけ) 最新のところにコメントじゃなくてすみませんが、更新頑張ってください!応援してます! (2016年9月22日 15時) (レス) id: 2b73766c3c (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - 月永 巡さん» ギャアアアアこちらにもコメントいただいてたんですね…!今気づきましたありがとうございます!!knightsとのじゃれあいは書いてて楽しいです、嬉しいコメント本当に本当にありがとうございます! (2016年8月29日 16時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
月永 巡(プロフ) - すっっごい好きですこのお話!!!! もっと早く出会いたかったっ...! もうKnightsとの関わりが楽しすぎです(;∀; )!! 大事に読ませていただきますっ(`;ω;´) (2016年8月25日 21時) (レス) id: f2838a14db (このIDを非表示/違反報告)
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