【あんスタ】円舞する騎士と快活の姫君(3)

第一回夜闇の魔物議会/1(side薫) ページ28

……なんて、数日前のことをぼんやり思い返していたけれど、朔間さんの声で我に返った。

「見ておくれ、薫くん、アドニスくん、わんこ。我輩、Aにあげるはずだったお菓子がどんどん溜まってゆくんじゃ」

そう言いながら開けられた棺桶の中には、ぎっしりとカラフルなパッケージのお菓子がつめられていた。なにこれちょっとエグい。

「買い物にいくたびにAのことを思い出して、気づいたら買ってしまうんじゃよ。この状況じゃ渡すにも渡せんし、ちと貰っていってはくれんかの」

「……まあ、甘いものは嫌いじゃないし、もらうけどさぁ」

落ち込む朔間さんがあまりにも悲壮な顔をしていたので、差し出されたクッキーの箱を受け取った。

……っていうか俺もこのクッキーみるたびにAちゃん思い出すじゃん。
あの子が転校したてのころ、見た目だけは文句なしに愛らしかった彼女を何も考えずにデートに誘ったら、カフェで財布の中身をほぼ使うことになったのは地味に黒歴史なんだよね。

「そういえば、大神はAに会いにいくといっていたな。何か情報は掴めたのか？」

朔間さんから例のごとくポテトチップスを押し付けられながら、アドニスくんが思い出したかのように言う。と、晃牙くんは不機嫌そうにもごもごと答えた。

「いったんだけどよう、菓子投げたら上手い具合にヒットしてあいつ気絶しやがったんだよ。それで、出直すことにした」

「……余程いいところに入ったんだな。大神のコントロール能力には感心するが、あまり褒められることではない」

「ちゃんと謝ったの、晃牙くん？」

また朔間さんにどやされるよ、と付け足すと、「羽風センパイには言われたくね〜よ！」と遠慮のない罵倒がかえってきた。それから、バツが悪そうに彼は呟く。

「お詫びにジュースと菓子を置いてきたから、アイツはむしろ喜んでんだろ。ったくよう、Aが逃げ
たりしなきゃあんなことにはならなかったのによ」

「大神の勢いが怖かったんだろう。Aはわりと貧弱だからな、あれでも女の子だ」

「あれでもって」

……言ってることには概ね同意するけど、この子も変なところで遠慮ないよね。

「あまり強引なことをしてはならぬよ。さりげなく聞き出すのじゃ、あくまで我輩たちは敵なんじゃから」

なんて、自分で言っておきながら朔間さんはまた泣きそうに顔を引き攣らせた。今回の作戦に一番堪えてるのは間違いなく朔間さんだ。……言い出しっぺなのにね。

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