魔術師は見定む/1 ページ11
翌日の放課後。
私は何故か、アイドル科の校舎裏で一人立ち尽くしていた。事の発端は昨日、別れ際の朔間さんの一言だ。
『明日の放課後、アイドル科の軽音部室まで来い』
そこで待ってるから、と彼は続けた。
＿＿＿＿アイドル科。万全なセキュリティに守られた敷地内の校舎には、美しく舞台を彩る「アイドル」たちが日々切磋琢磨しているらしい。クラスの女子たちが、朝アイドルの○○くんを見たとかなんとか、嬉しそうに話していたのを小耳に挟んだことがある。
しかし私は、そういうものに興味が持てない人種だ。むしろテレビすら見ないのだから、今の流行がなんなのかもわからないし。趣味は読書だけれど、読むものといえば昔の文豪小説だ。ファッション雑誌だとか、流行りの恋愛漫画だとか、触ったこともない。
そんな、私に＿＿＿＿アイドル科に行けって？しかも、そこで「待ってる」ってことは。さすがの私でも分かる。このひと、まさか……。
そのとき、黙りこんでいる私に「入るのに困っている」とでも勘違いしたのか朔間さんは一つの提案をくれた。
『入り口からはセキュリティがあるから入れないんだけど、校舎裏のフェンスに一箇所破れてるとこがあって……まあ、俺が破いたんだけど。そっから、入ってこいよ。ほら、見えんだろ？』
あっち、と指をさされ見た方向には、見慣れた草むらがある。草むらの中に聳え立つ、錆びたフェンスの一部が、朔間さんのいう抜け穴になっているらしい。
＿＿＿＿実際、その言葉通りだった。草や落ち葉をかきわけると、確かに破れたフェンスを見つけることが出来た。なるほど、あの人はここから普通科まで入ってきたのだろうか。
了承してしまった以上、無視するわけにはいかない。痛む胃を抑えながら、私はフェンスを潜り抜けた。それから、それから。
……どうしよう。
朔間さんは抜け穴こそ教えてくれたけど、軽音部室がどこなのかなんて教えてくれなかった。その上、軽音部室は校舎内でしょ？誰かに見つかった、その時点でおしまいだ。
はぁ、と長いため息が落ちる。誰か、話の分かる人が通りかかってくれないかな。それか、朔間さんが迎えにきてくれないかなぁ。
なんて願ってみても、現実はそう甘くはない。
引き返すことも考えたけど、あの人ならどうせまた私を呼び出すだろう。
それならと覚悟を決めて、私は一歩、砂利道を踏み出した。
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まめだいふくもち(プロフ) - こたつさん» こたつさん、ご指摘誠にありがとうございます。漫画などでよく見る表現だったのですが、なにか事件が関連していたのですね…。勉強になりました。つきましては、その表現を修正させていただきます。コメントありがとうございました！ (2017年10月29日 15時) (
レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
こたつ - ドラム缶に東京湾というワードは某事件を連想させるので修正した方が良いのではないでしょうか？ (2017年10月29日 9時) (レス) id: ae4fce482d (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - 抹茶粉さん» 抹茶粉さん、コメントありがとうございます！とてもとても嬉しいです…！私もれいさんにプロデュースされたい！という思いから書き始めたので、光栄です笑 (2017年8月2日 22時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶粉 - 零さんにプロデュースされるなんて夢見たいです…！もう始まりから胸のきゅんきゅんが鳴り止みません！笑 続き楽しみにまってます！更新頑張ってください！ (2017年7月26日 16時) (レス) id: 634a139de2 (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - ベリーさん» ベリーさん〜！ご指摘ありがとうございます。修正してまいりましたのでご確認ください。そして、またこのような事態があればお知らせください。 (2017年1月14日 13時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
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